士官学校編

□11.キスと告白
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明け方近く。

リザはスティングレイの待つテントの入り口を開けた。

「ただいま帰りました。」

そう言うのが先か、スティングレイは顔を上げ、そしてリザを片腕で抱き締めた。

「…!!」

息もつかせぬ勢いにリザは驚き、いきなり抱き締められた事を抗議しようと口を開きかける。

「…遅い!!」

スティングレイの切なる声に、リザの抗議の言葉は喉まで出かかって飲み込まれた。

「でも良かった。…無事だったか。」

大きく吐き出された息と共に、スティングレイの心の底から出た言葉。

リザは思わず先程ダレン教官から聞いた話を思い出す。

「思ったより道のりが険しかったので、帰りは安全策をとり、明るくなるまで待っていたんです。」

リザは抗議の代わりに、何故遅くなったのかを説明した。

どれほど心配していたのか。

スティングレイの過去を知った今では、その事ばかりが頭の中をよぎる。

スティングレイがリザを抱き締める腕の力はなかなか緩まなかった。

「…スティングレイ教官?」

リザはそっと名前を呼ぶ。

「…。」


リザは諦めて、スティングレイの気が済むまでじっとしていることに決めた。

少しだけ肌寒い明け方のテントの中で、スティングレイはリザを抱き締め続ける。

「…心配で気が変になりそうだった。」

リザはスティングレイを安心させる為に、彼に微笑みかける。

「それ程危険な任務ではありませんでしたよ。」

「…そうか?」

スティングレイはリザを抱き締めたまま、その姿勢で答える。

リザの耳元に、スティングレイの声が直接聞こえてくる。

「なら良かった。」

「…。」

むしろここに残ったスティングレイの方が疲れている様だとリザには思っていた。
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