士官学校編
□12.罪の形
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―――リザは、動揺していた。
重ねられたスティングレイの唇は優しく、温かかった。
握られた右の手が解放されると、スティングレイの左腕はリザを再び強く抱きしめる。
片腕でありながらその腕は力強く、リザに強い安心感を与えた。
そしてリザはその安心感身を任せてしまいたい衝動にかられる。
ロイを追いかけ士官学校に入り、夢中になってロイと同じ夢を追いかける。
その判断は正しかったのか、間違っていたのか。
立ち止まり、不安に思う日が無い訳ではなかった。
…ロイがこの事を知ったらどう思うのか。
彼は自分がいつ死ぬかわからない世界の人間になるのだということを理由に、リザに別れを告げたのだ。
その世界にリザ自身が踏み入れてしまったと知ったら?
…彼は失望するだろうか?
…それとも呆れるのだろうか?
それでもリザはロイの評価を得ようとしてこの道を選んだわけではない。
ロイの夢を聞き、その夢を自分の夢として追いかけたくなったのだ。
…この国の人々の幸福を。
それでも、迷いは日々生じる。
銃の重たさ。
訓練を積むごとに精度を増していく、銃の腕。
『お前に人が殺せるか?』
スティングレイの言葉。
私は何所へ向かっているのだろう?
ふと問いかける先には、誰も居なかった。