士官学校編
□15.傍に
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リザは誰もいないロッカー室に入る。
いつもリザは着替える時間を皆とずらしているのだ。
勿論入れ墨を見られる訳にはいかないから。
とは言え、秘伝の入れ墨は判る人でなければその意味すらわからない。
意味が判ったとしても、解読できる人間は相当に限られている。
おそらく国家錬金術師の手を持ってしても、専門の分野の者でなければ暗号を解くことは難しいのではないだろうか。
父とて、この入れ墨が人目についてしまうことを考えなかったわけではないのだ。
…だからそんなにも完璧にひた隠しする必要もない。
…だがやはり気になるものだった。
リザは静かに自分のロッカーの前でため息をつく。
最近、一人でいると自然にこの前のスティングレイとの事を考えてしまう。
…あの事はリザにとって決して嫌なことではなかった。
あの疲労感にまみれた肌寒いテントの中で、スティングレイの唇は温かく、リザを抱き締める片方だけの腕は強い安心感を与えてくれた。
ただただ心地良く、何も考えなくて良い時間。
そんな時間は、あの時から今までにあっただろうか?
ロイ…。
貴方はもしかしたら、『それでいい。』と笑うかもしれない。
そう思うと…リザの心はキシリと音を立てて痛む。
だってあの別れは、そう言う意味の別れだった。
…それぞれ互いの幸せと、夢の達成を願い…
あの時貴方が私の背中に『幸福の錬成陣』を刻んだその意味。
…あれは、貴方のいない所で、私が幸せになれるようにと願いを込めたのでしょう?
それでも私は貴方を思う。
…あの時の様に恋焦がれている。
あの時私は…、スティングレイの傷を癒やす振りをして、彼の優しさに逃げたのだ。
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