士官学校編
□15.傍に
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リザは古びたロッカーを開ける。
「…っ!」
驚きで思わず手を引っ込める。
見ると人差し指の内側が切れてしまっていた。
驚きのままに、ロッカーの戸の取っ手部分を見ると、誰かの手によって鋭利な刃が仕込んであった。
…あまり痛みは感じなかった。
やがて血がじわりと湧き上がり、ズキズキとした痛みが遅れてやってきた。
たまたま手に持っていた白いタオルが血に染まっていく。
最初は大したことが無いと思った傷からは、一度血が出始めたら今度は止めどなく滲み出てくる。
刃はテープで簡単に止められているだけだった。
リザは注意深くそれを取り、ロッカーを開ける。
…そこには。
「…!」
リザの着替えやタオルの替えが切り裂かれ、乱暴に中に突っ込まれるようになっている。
それらは真っ赤に染まっていた。
…!血?
一瞬胸が痛む程に心臓がドキッとする。
しかしすぐにそれは血ではなく赤いペンキだということがわかった。
ホゥと息を吐き、少しだけ頭が冷える。
驚きで止まった体が、動きを再開した。
実を言えば、こういう事は初めてではなかった。
時々…。
ロッカーの中の物がなくなったり。
その無くなったはずのものがゴミ箱から見つかったり。
中にある衣類が破かれている事も珍しいことではなかった。
…しかし、今回のようにリザ自身を傷つけるようなものは初めてだったし、…赤いペンキからは自分に向けての悪意をはっきりと感じとれた。