士官学校編
□17.機械鎧
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さっきまでの息苦しい空気が嘘のように消え、そこにはぬくもりがあった。
リザはここの部屋の空気をもう一度確かめるように深く息を吸う。
スティングレイの部屋に招き入れられた瞬間から思っていた。
「…ここは…、…銃と火薬の匂いがしますね。」
そう、スティングレイの部屋は射撃場や、あの銃器の店と同じ匂いがした。
…鉄と火薬の匂い。
そのいつも嗅ぎなれた匂いがリザを安心させた。
…リザはベッドから頭を持ち上げると、ベッドの横の棚に雑然と並んでいる銃を眺める。
「それは全部レプリカだよ。」
リザの視線の先を見て、スティングレイは説明する。
「色々あるんですね。」
名器と言われる昔の銃や、実際に手に入れることは難しい希少な銃のレプリカ等、よく見るとリザも興味をそそられるような物ばかりだった。
「趣味でね。昔集めたんだ。…これなんかいいだろう。これは………」
その中の銃を手に取ると、スティングレイは嬉しそうにその銃について説明する。
まるで子供が玩具を自慢しているようだ。
リザは頷きながらその説明を聞く。
「でな。これのすごい所が……」
「はい。」
「…って。こんな話聞かされてもつまんないよな。」
「いいえ。楽しいですよ?」
説明を止めたスティングレイに続きを促すようにリザは言う。
スティングレイはリザのそんな顔を見て、なんとも言えぬ嬉しそうな顔をした。
銃のレプリカの横には、車や戦車等の模型。
本が何冊も床に直置きしてある。
背表紙を見ると、銃火器についてはもちろん、歴史や地理などその種類は多岐に渡っていた。
「昔から何でもかんでも集める癖があってさ。…興味ある事は全部手を出さずにはいられないっつーか…。」