士官学校編

□19.リゼンブール2
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「誰だ?アンタ。」

訝しげな顔でスティングレイを見る少年。

デンと呼ばれた犬は少年の元に近づき、少年と一緒になってスティングレイを睨みつける。

「おいおい。二人して…じゃなくて一人と一匹してそんなに睨みつけないでくれ。怪しいもんじゃないよ。ピナコさんの客だ。」

スティングレイは相手を安心させようと、いつもの人懐っこい笑顔を浮かべる…が、頑固そうな一人と一匹は全く表情も態度も変えようとはしない。

少年はチラリと、アームホルダーで吊られてたスティングレイの右腕を見る。

「ふーん。アンタ右腕が利かないのか。」

「そうだ。」

「義手?機械鎧?」

ずいぶんと無遠慮な少年だ。

「機械鎧。実はピナコさんに断られていてね。泊まり込みでお願いしているって訳さ。」

「ふーん。そんなことだろうと思った。…無駄だよ。ばっちゃんが一度やらないって言ったら絶対にやらない。」

「…そんな感じだな。」

「…あんた。この前電話してきた軍人に戻りたいとかいう奴だろ。」

「そうだ。何故わかる?」

「うーん。軍人っぽい体つき…、や、目だな。」

「目?」

「普通と違う。」

「そうか?」

「ああ。きっとばっちゃんは、あんたのその目が嫌なんじゃないか?」

まだほんの子供の彼に、人の目に映る影が見て取れるというのか。

金色の瞳は、何も見逃しはしないとばかりに強く光を放っている。

スティングレイはその不思議な少年の、率直な態度に好感を抱いた。

「目か。…。」

スティングレイは敬意をもって少年に自分の名を告げる。

「君の名前は?」

「エドワード・エルリック。」

「エド、か。よろしく。君は正直な奴だな。」

「気安く呼ぶなよ。俺は馴れ馴れしい奴は嫌いだ。」

「兄さーん!」

エドワードが先程来た方向から、もう一人の少年がやってくる。

「なんだよアル!」

呼ばれて、エドワードは答える。

少年はスティングレイに気がつくと、深々とお辞儀をした。

「すいません。兄さんがなんか失礼な事言いませんでしたか?」

「んだよ!アル!!余計な事言うな!」

「だって兄さんは、いつもそうだろ!初対面の人にズケズケと色々言ったりするんだから!あのね。兄さんはいつも一言多いんだよ。何かを隠したり、嘘はついたりするのはいけない事だよ。でも言って良い事と悪い事っていうのもある。…礼儀っていうのはまた別の話しなんだよ!何でもかんでも思った事を口すればいいって訳じゃないんだから!!」

少年はガミガミとエドワードを諭す。

エドワードは不服そうだが、一応は真面目に聞いている。

兄弟…。

兄さんってことは、こっちが弟だよな?

スティングレイは確認の為に二人を見比べる。

若干弟の方が背が高いようだが。

…それにしても…。

スティングレイは思わず吹き出してしまう。

なんだこの正反対の兄弟は。

エドワードはキン!!とスティングレイを睨みつける。

「いや。悪い悪い。仲良い兄弟が羨ましくてつい。」

スティングレイは笑いながら言う。

「もし兄さんがなんか言ったとしても、気にしないでくださいね。」

弟は申し訳なさそうに言った。

「けっ!!」

エドワードもう一度スティングレイを睨みつけると、弟とデンを引き連れて行ってしまった。




やれやれ。
気にするなったって…。

子供の言うことだ。
真に受ける必要はない。ということは解る。





しかし、目か。…ますます凹ませてくれる。



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