士官学校編
□20.中央にて
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士官学校の生徒寮の一部屋。
(狭いが、生徒には一人一人の個室が与えられている。)
そこに女生徒二人のはしゃぐ声が響いている。
「ちょっ…ちょっとリザ!もう少し優しくして!」
笑いを含んだ声。
「駄目よレベッカ。ストレッチはいつもこうやって入念にやらないと意味がないのよ。」
こちらも真面目に言い含める様なそぶりを見せながら、相手の痛がる様を見て、愉しんでいる。
パジャマ姿…と言っても、互いに学校指定無地の上下の色気も何もない恰好だったが、士官学校では一二を争う程の美人が二人…
…ベットの上で体を解し合う姿を他の男子生徒が見ることがあったとしたら、それはもう鼻血ものだろう。
「もう。…もう降参!いきなりこんなにやったら明日痛くなるわよ!絶対!」
「ずるいわよ。今日はストレッチを真面目にやる約束で泊まりにきてもいいって言ったのに。」
「もう十分!十分真面目にやったわよ!」
レベッカは額にうっすらとかいた汗をタオルで拭う。
リザはそんなレベッカを見て、
「いいわよ。今日のところは許してあげる。」
と笑った。
「もっと寂しがってると思ったのに。」
レベッカは狭いベットの片側に自分の枕を置き、手の平でポンポンと叩いた。
「え?」
「スティングレイ教官。少しの間いないんでしょう?…恋人ならもっと寂しがるフリだけでもしなさいよ。」
レベッカは当然の如くそう言い放ち、コロリとベットに寝転がった。
「スティングレイ教官のことだから、絶対に何かある毎にリザの事思い出して、寝る前とかにも思い出したりして、『会いたいー!』なんて独り言言ってるに決まってるんだから。…ああ。しつこい。言ってるだけでクドイわ。」
「…。」
「何?リザ。あなたのも正直者ね。さては彼が居なくなって、少しホッとしているんでしょう?」
「そんなことは…」
リザの表情を見て、レベッカはニヤリと笑う。
「ある。…わね?」
スティングレイはリザとの事を特に隠さず、むしろ嬉々としてレベッカに話したし、リザもレベッカにならスティングレイの事を話した。
おかげですっかり事情通になってしまったレベッカは、
『俺が居ない間、ホークアイの事を頼むな。』
なんて言われたのだ。
ああ過保護な男はこれだから…。
とレベッカは呆れたものだ。
『言われなくとも、私はリザの親友ですから。いつも彼女のそばにいますから。』
と言い返すが、スティングレイはその言葉に込められた嫌みにも気がつく様子はなかった。