士官学校編

□21.レベッカの過去
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レベッカ・カタリナ。

彼女の実家は代々伝わる小さなワイナリーだ。
古くからの葡萄畑は彼女の父親によって大切に守られている。

昔ながらの手法を遵守し、決して儲けに走らない。
その頑なな方針ゆえ、家の経済状態はあまり良い方とは言えないが、根っからの明るい性格のカタリナ家の人々はそんな生活が最も自分達に合っているのだと知っていた。

そんなカタリナ家の一人娘として産まれたレベッカは、父親そっくりの頑固で強気な性格の明るく快活な女の子だった。

レベッカの他に子供が産まれなかった両親は、彼女に惜しみない愛情を注いだ。

レベッカはその愛情を真っ直ぐに受け取り健やかに育つ。

「母さん!!遊びに行ってもいい?」

「待ちなさい。お父さんが大事な話があるって言っていたでしょう?」

母親は困ったように優しく微笑んだ。

「だって約束の時間過ぎてるもん。」

「もうすぐ着くはずだから…。」

レベッカが五歳の時だった。

父親の親友夫婦が事故で死に、一人息子が残された。

その息子の名前はセシル。
その時彼は十歳だった。

「レベッカほら、父さん帰ってきたみたいよ。」

外で馬車が止まる音がした。





「ただいま。レベッカ。いい子にしていたか?」

父親の古びた麦わら帽子から、黒髪の癖毛が少し見えている。
髭は濃く、彼の笑顔はおおらかで裏が無い。

同じ笑顔でレベッカは答えた。

「もちろん!」

父親の後ろに痩せた男の子が立っていた。

「誰?」

レベッカはすかさず尋ねる。

男の子は何も言わない。
かわりに父親が言った。

「セシルだよ。今日から家で一緒に住む事になった。」

「え?どうして?」

「この子の両親はね。事故で亡くなってしまったんだ。引きとり手もいなくてね。この子には行く所がないんだ。この子の両親は父さんの親友だった。だからこの子を我が家で家族として迎えることに決めたんだ。」

「…そうなの。」

レベッカはその事の重大さや、セシルの哀しみを半分もまだ理解できずに無邪気に頷いた。

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