士官学校編

□22.墓
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夜中、リザは不意に目を覚ました。
眠りの浅い彼女にはよくある事だ。

いつもは全くの暗闇で寝ている彼女だが、今夜は小さな豆灯がほんのりとした灯りを灯している。
隣ではレベッカがスヤスヤと眠っていた。

リザは自分以外の誰かと二人でベットで寝るなんてことには慣れていない。
だが、夜中にすぐ目を覚ましてしまう彼女にとって、隣に誰かの温もりを感じられるのは何より心安らぐ事だった。

夜一人きりで目を覚ます。…ということは世界で自分がたった一人になってしまったかのような錯覚を生みだすのだ。

失礼かと思いつつもレベッカの寝顔を見る。
長くて濃い睫毛。
厚いカーテンが閉まっている様だ。

「う…ん…。」

気持ち良さげに眠っていたレベッカの眉が寄せられる。

眠りながらも、自分の視線が不快だったのだろうか。リザは急いで目を逸らす。

レベッカは寝返りをうった。

「…。う…。…セ…シル…。」

どうやら自分の視線のせいではない。
彼女は何か夢でも見ているのだ。

リザの知らない名前を呼ぶレベッカ。
そして、その目尻に小さな涙が滲んだ。

「レベッカ?」

リザは彼女の頭を撫でる。
できるだけ優しく。

するとレベッカの寄せられた眉は自然と緩み、再び安らかな寝息を立て始めた。

リザはほっとして、レベッカの頭をもう一度撫ぜる。

…レベッカ。
彼女にも私の知らぬさまざまな思いがあるのだろうか?
リザは考える。

友達…それも親友と呼べるような友達ができたのはリザにとって初めてのことだった。

私などよりも、明るくてハキハキとした気持ち良い性格の彼女には沢山の友達がいるし、私などその中の一人にすぎないだろうけども…

彼女は、私にとってやっぱり掛け替えのない存在だ。

私と同じ目線で物事を見る努力をしてくれて、私もまた彼女の目線と同じものを見ようと努める。
…喜びと悲しみを分け合う存在。

かつて友人をつくれるような環境で生きてこなかったリザ。
友人というものの概念は何となく判れど、実感したことは皆無だった。

リザはこの友人の事をもっと知りたいと思う。
そして自分の事も知ってもらいたいと思った。

自分の事を語る事を躊躇しがちなリザがこんな事を思うのは、本当に希有な事だった。


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