士官学校編

□22.墓
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…カタン…。

ごく小さな物音に、リザは身を竦ませる。
隣でレベッカは変わらす寝息を立てている。

ドアの外で何か音がしたような気がした。
今夜は風も強いし、雨音も混じっている。
本当は窓の外からの音だったのかもしれない。

…そうでなくても取り立てて気にするようなことではないだろう。

リザはそのまま何事も無かったように、再び眠ろうとした。…のだが…

…どうも気になって仕方がなかった。

仕方なしにリザはベットからそっと起きて、ベット脇に置いてあるルームシューズを履く。

レベッカを起こさないように、音を立てぬようそっと個室のドアに向かい、ノブを捻った。

「………?」

ドアの外には小さなダンボール箱が置いてある。
…部屋に帰ってきた時、こんなものは無かった。
誰かが置いていったのだ。
…今?
こんな時間に?

リザは不吉な予感を感じながらもその小さな箱を持ち上げる。

箱は思ったよりも軽かった。
何の変哲もないダンボール箱の感触に、どこか軽率な印象を抱く。

…何が入っているのか。
誰が置いて行ったのか。
心当たりは…一つだけ。

つい先日のロッカー室での出来事がよみがえる。
自分に向けられた憎悪の感情。

…。

リザは箱を机の上に置き、それを注意深く開けた。

「………っ!」

思わず声が出そうになってしまった自分の口を押さえる。

…眩暈がした。
何故。
もはやその言葉しか浮かんでこない。

箱の中には小さな猫の死体が入っていた。

もう生きていないことはすぐにわかった。

胴体に撃たれたような跡があった。

箱の中に白い布がひかれていて、その上に猫は丸めて入れられている。

白い、小さな猫だった。
傷や血に触れぬよう、恐る恐る猫の背部分に触れてみる。
毛は柔らかく、絶望的に冷たかった。

リザは吐き気を堪えて、深呼吸する。

猫が哀れで、リザの胸はずきずきと痛んだ。

私の為に殺されてしまったのだろうか。
そう思うとリザはもう居てもたってもいられなくなった。

頭がくらくらとしたが、奥のベッドで寝ているレベッカの気配を感じると、幾分しっかりとした気力が戻って来るようだった。

リザは小さな猫に何か、とても小さな声で囁きかけ、そしてゆっくりと箱の蓋を閉めた。

リザは上着を着て、箱を持つ。、静かに部屋を出た。
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