士官学校編
□24.電話で
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「動くなよ!ウィンリィ!!」
スティングレイは木の上で細い枝にしがみ付いているウィンリィに向かい大声で言った。
ウィンリィは返事をする余裕も無く、彼女の体を支える細い腕は限界に近い。
彼女は自分の体を支えるだけでも精一杯なのにも関わらず、片手には木から降りられなくなって往生していた子猫を抱えていた。
スティングレイは枝に足を掛け、片手で登る。
大柄な彼が動く度に木はしなった。
できる限り木の揺れが少なくなる様に気を遣いながら登るが、少しの揺れにもウィンリィは小さく悲鳴を上げた。
「もう少し。頑張れよ!」
スティングレイはウィンリィを励ましながら、彼女に笑い掛けた。
「だ…大丈夫…っ!」
ウィンリィも何とかスティングレイに応える。
木の下ではエドワードとアルフォンスが、青い顔をして二人の様子を見上げていた。
その時だ。
全く風が吹いていなかったのに、急に突風が吹いたのだ。
「きゃあ!!」
ウィンリィの悲鳴。
それと共に彼女の体は枝から離れた。
「!!」
スティングレイは咄嗟に自分を支えていた片手を放し、墜ちてくるウィンリィの体を受け止めた。
スティングレイの体はそのままウィンリィと共に落下する。
ドサリっ!
と鈍い音がして二人は木の下に墜ちた。
「…!!!」
「ウィンリィ!ダグラスさん!!」
スティングレイの体がクッションになったおかげで、何ともないウィンリィはすぐに起き上がる。
彼女が手を緩めた瞬間、驚いた猫はあっと言う間に逃げていってしまった。
「ダグラスさん!」
ウィンリィは、自分の下敷きになって倒れているスティングレイの名を呼ぶ。
スティングレイはウィンリィの無事を確認すると、ニコリと笑った。
「…大丈夫か?ウィンリィ。…ってっ…イタタタタタ!!」
「…っ!テテ。痛た!そこ痛いです!」
「大の男がなんだい!!我慢しな!」
ロックベル家の診療室のベットに寝かされたスティングレイは、さっきから喚き続けている。
「そんなこと言ったって…っイタタタタタ!」
ピナコは先程撮ったレントゲン写真をみる。
「ちょっと触っただけだよ!アンタ本当に軍人だったんだろうね?…ああ。やっぱり折れてる。」
「もちろんですよ!(ゼイゼイ)」
「アンタがあんまり大騒ぎするから、ウィンリィが気にしてるよ!」
スティングレイが見ると、戸口でウィンリィが泣きそうな顔で様子を見ている。