士官学校編

□25.手術
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「手術は二度に渡って行う。…まずは腕の切断手術。これには全身麻酔を使う。」

ピナコは腕を組み、キセルをくわえながら説明する。

「腕の切断後、アタシは機械鎧製作に取り掛かる。…あんたの切断後の状態を見ながら、約二週間程で機械鎧の装着手術を行う。そしてリハビリと並行して機械鎧の微調整を行っていく。」

「はい。」

「注意して欲しいのが、機械鎧の装着手術には麻酔を使わないという点だ。…麻酔を使うと生きて活動している神経と使われていない神経の見分けがつかないからね。」

「はい。」

「手術には相当な痛みを伴う。…それだけは覚悟しておいて欲しい。…止めるなら今のうちだよ。」

ピナコはスティングレイの意思を確かめる様に彼の目の奥を覗き込む。

スティングレイは瞬きもせずに深く頷いた。

「覚悟は出来てます。」

「よし。手術は明日の昼からだ。」

「わかりました。」









夕食は消化の良いものをピナコが作り、スティングレイはそれを美味しそうに平らげた。

その後、スティングレイはいつもより早めに客用の寝室に戻る。

一人になったスティングレイは、ベットの縁に座り込む。

仮に固定されて吊られている右腕を見つめた。

「明日でお別れか。」

右腕に向かってスティングレイは呟く。

彼が生まれてから、当然の如くそこにあった右腕。

決めてきた事とは言え、寂しさは募った。

明日この右肩から下の部分は、もう彼の一部ではなくなるのだ。

…リザが優しくこの右腕に触れた事を思い出した。

「…。」

こんなにも右腕に対して思いが溢れ出すとは思ってもみなかった。

邪魔なだけだと思っていた右腕…。

ピナコはこの喪失感をなるべく長く感じさせまいと、手術まで間を置かないように配慮したのだろうか。

スティングレイはそんな事を考えながら、軟弱な自分の心に喝を入れる。

寂しがっている場合か。
決めた事だろう。
もう充分すぎるくらいに立ち往生したじゃないか。
もう止まっている時間は終わったのだ。

…そこへ、いきなり部屋のドアが開いた。

「うわ。暗れーな。電気くらい付けろよ。」

ノックもせず、無遠慮にエドワードが部屋に入ってくる。

「エドか。なんだびっくりした。」

「ばっちゃんに頼まれたんだよ。…明日は朝から検査やら何やらで慌ただしくなるから、忘れないうちに装飾品とか外しとけって。」

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