士官学校編

□26.別れ
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スティングレイが手術を受けてから半年…。







その頃リザは士官学校卒業を目前にしていた。

数ヶ月前からイシュウ゛ァール殲滅戦が始まり、国家錬金術師の投入が実施された。

現地の人員不足により、士官学校、最終学年の訓練生は兵士として戦場へ赴く事が決定した。

ダレン教官は狙撃クラスのメンバーを集め、その旨を説明する。

「一般の訓練生達は、主に非戦闘区域での物資の輸送や雑務に当たる。…しかし、現場では狙撃兵が特に不足しているとの事。…君達の中で、実際に戦闘区域で現役の兵士達と共に闘う意思があるものは名乗り出てもらいたい。」

しんと静まり返る。
優秀でより抜きの訓練生達の集まりと言えども、すぐに名乗り出る強者は居なかった。

ダレン教官は当然だろうとばかりに頷いた。

「はい。」

一人のきっぱりとした声が響いた。

ダレン教官は顔を上げる。

「リザ・ホークアイ。君に狙撃兵に志願する意思があるのか?」

「はい。」

リザは表情を変えない。

「それがどういうことだか分かっているのか?」

ダレン教官は確認する。
リザは再び毅然とした返事をした。







…銃声が響き渡る。

リザにとって射撃場は、気を紛らわすのに最も適した場所だった。

銃と、目標の事だけを考えていれば良い。
心を無にすればする程に命中率は高くなるのだ。

「重心が傾いてる。」

不意に後ろから助言されて、リザは重心を体の中心へ持っていくように銃を構え直した。

そしてリザが撃った弾は、見事目標の中心を捉える。

…彼女は弾が目標に当たった後も、すぐに姿勢を変える事なく、集中した心を残し、一呼吸置いて構えを解いた。

「…上手くなったな。」

「ありがとうございます。…スティングレイ教官。」

リザは振り返り、後ろに立つスティングレイの顔を見上げた。

太陽の陽射しの様な笑顔は変わらない。
笑うと目尻の傷が深くシワを作る所も。

「ただいま。」

リザはニッコリと微笑む。
お帰りなさいの意味を込めて。

「…相変わらずだな。」

「何がですか?」

「何て言うか…、何もかも。」

真っすぐに人の目を見る所も、生真面目な口調も、その美しい佇まいも、何もかもが…。

リザはまるで意味がわからないとでも言うように、その綺麗な顔で苦笑いした。

スティングレイの右腕が動いて、リザの目の前に差し出される。

リザはその動きを驚きのままに見た。

…彼の右手が動いている。

一瞬…。
本当にそう見えた。
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