士官学校編

□32.再会
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真っ赤に染まった険しい岩の山に太陽が沈んでいく。
強い風に吹かれて舞い上がる砂に辟易しながら、ロイは肩をすくめた。

砂漠気候のこの土地。
昼間の気温は平均して40度前後。時に50度を越す事もあるが、夜になれば気温は氷点下まで下がる。

同じ太陽でも、ここの太陽は無慈悲にして容赦というものが無い。
日中は全てのものを焼き尽くそうかという程の強い力を誇示するにも関わらず、ひとたび夜になればあっという間に顔を背けて、その片鱗を少しも残さない。

こんな気候だからだろう。
皆が少しずつ狂気に近づいて行くのは。

だいたい人間が住むような所じゃない。
正直な感想だった。
何故イシュウ゛ァール人の祖先は自分達の生きる場所を此処に決めたのか。
この土地に何を見いだしたのか。

…親友との再会は決して嬉しいばかりのものではなかった。
懐かしさが込み上げるものの、親友の目は薄暗く冷たい目をしていた。
自分と同じ目だ。
そう思うと堪らなかった。






……彼女の姿を見た時、膝の裏からゾクリと悪寒走った。
イシュウ゛ァールの夜の寒さのせいではない。
目の前の彼女の存在はまさに悪夢だった。
ちらちらと燃えるたき火の火に頬を照らされて、彼女は立っていた。


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