士官学校編

□34.終戦
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そして更に時は流れる。
更に大量の血が流れ、命が失われた。





……
「帰ろう。戦は終わった。」

『帰ろう。』その言葉は、彼が心から言った言葉だった。
…だが、実際口に出してみるとその言葉はまるで薄っぺらい偽の言葉のように聴こえた。

帰る処などあるものか。
ロイは知っていた。
何処を探しても、そんな処は無い。

「お願いがあります。マスタングさん。」

彼女は冷静だった。
あの日に見せた私への憎しみを見せる事も無く、ただ淡々渇いた声で話した。
ロイはその小さな背中を苦々しい思いで見つめる。

リザはそのままの口調で言った。

「私の背中を焼いて潰してください。」



ロイは奥歯を食いしばり、微かに頭上を仰ぎ見る。

…青い空。
ジリジリと焼け付く様な日差しを除けば、それはいつか二人で見た空と変わらない。

リザは黙ってロイを見詰めていた。







―…再び君に誓おう。

この国の頂上に上り詰め、今度こそこの国の為に、人々の為に、この命を捧げる。

私はまだ諦めてはいない。

君と約束した、あの青い理想は脆く崩れ去ったが…

誰も理想を描く事を止められはしない。

汚く足掻き、泥水を飲んでも、私は歩み続けよう。

その理想の果ての世界が、我が存在を疎んじようとも。



…そう決意したのは君に再会した直後だったよ。

私にとって君との再会は、これからの私の生きる道を示したのだ。

弱い私は、…やはり君がいなければ駄目だったということだ。




君からの憎しみの眼差しで目が覚めた。





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