企画用
□あかり
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眠い…。
まだ眠い。
周りが窓から差し込む朝陽で既に明るくなっていることは目を開かなくてもわかった。
ポカポカ…。とても良い気持ち。
慣れ親しんだ自分のベットは、私を優しく包み込む。
何度か洗い使い込んで、良い具合にクタリと柔らかくなったシーツの肌触りはとても気持ちが良く、起き出すが更に億劫になる。
…普段、いくら眠くても、それを断ち切る様に起きてしまえるのが私の常なのに、その日は何故かいつまでもベットの中から離れがたく、目をつぶったまま、眠気と格闘していた。
昨日までの一週間、北方へ出張をしていた。
自分では気がつかなかったが、驚くくらいに疲労を溜め込んでいたらしい。
真夜中に部屋に着いて、荷物を片付けることもできぬまま、着替えるのがやっとという状況で、そのままベットに倒れ込み、そのまま寝てしまった。
今日は早速報告の為に出勤しなければならない。
一週間、私が居ない間、仕事嫌いの上司や、何となく頼りない部下達によって、(どちらもイザと言うときはとても心強いのだが…。)仕事がどうなっているかとても気になる。
シャワーを浴びて、荷物を簡単に片付けてから…
頭の中で考えつつ…
ああ。大家さんに預けてある、ハヤテ号を迎えにいってあげなくては。
久しぶりだから、今日は仕事場に連れていってしまおうか。
そんなことを考えながら、今度こそ起きようと、眠い瞼を持ち上げる。
…。
そこには不思議な顔をして私を見つめるハヤテ号がいた。
?
ハヤテ号は大家さんに預けてあるはずだった。
昨晩帰ってきた時も、ハヤテ号は部屋にはいなかった筈だ。
…??
ハヤテ号。
…と呼び掛けようとすると、
「ニャー…」
と猫の鳴き声が聴こえた。
部屋の中に猫が迷い込んでいる?
体を起こしてキョロキョロと部屋を見渡すが、猫の姿は見えない。
この部屋に猫がいるなら、ハヤテ号が吠えてもおかしくないのだが…。
そのハヤテ号を再び見ると、彼は明らかに驚きの表情を浮かべていた。
ハヤテ号がこんなに表情豊かだったとは知らなかった。
毎日顔を見てるというのに…………。
…いつもと違う。
ハヤテ号。
あなた、いつもより随分と大きいんじゃない?