企画用
□溢れる思いと感謝をそのキスに込めて
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麗らかな春の日差しが窓から差し込んでくる。
埃が舞っているのがよく見えるけど、それも風情ってものよね。
私はレベッカ・カタリナ少尉。
人気の無い資料室の片隅で、窓から差し込む光をボンヤリと見つめている。
ああ。…暖かい。
外は寒かったけれど、日差しはもう春のものだ。
このままでは寝てしまいそうだ。
いやいやダメダメ。
私は腕時計を見る。
時刻は1430を示している。
…そろそろかしら?
資料室の隅においてある椅子から立ち上がり、入口のドアをごく薄く開けた。
…来た来た。時間どおり。
見えるのは廊下を歩く二人組。
偉そうに踏ん反り返ったいけ好かない男、ロイ・マスタング大佐と、その少し後ろを歩くのは副官であり私の無二の親友であるリザ・ホークアイ中尉。
二人が資料室の前を通り過ぎるのを待ち、頃合いを見計らう。
大佐が通り過ぎ、リザがドアの横を通る瞬間だ。
その瞬間に私は資料室から飛び出して、後ろからリザの口を手の平で塞ぐ。
銃の腕は敵わずとも、体術ならばいい勝負になる。
「………!!!」
うまく音を立てず、リザが少しの声を上げる事も許さない。
そのまま素早く資料室の中に引き込んだ。
ドア横の部屋の内側の壁に背をつける。
そして一呼吸置いた後、再び薄く開いたドアの外を見た。
すると少し離れた所でマスタング大佐が立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡しているのが見えた。
ふふん、ざまぁ。
「んんー!!んん!!」
ニンマリとしていると、私の腕の中でリザが苦しそうにもがいていた。
「あ、ごめんねリザ。くるしかった?」
急いで手を放すと、リザはハアッと息を吐いて、吸ってから私を睨んだ。
「何のつもり!?」
「あ。怒った?」
冷静な彼女が怒りをあらわにすることは珍しい。
だがこれも親友の特権と言うべきだろう、彼女はいつも比較的私の前では素直な感情を表に表すのだ。
「当たり前でしょ?こんな所で何してるの!?」