企画用

□Sanshain
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「中尉、大佐と初めて会った時って何歳の時だったの?」

俺がそう尋ねると、中尉は少しの間考えてから答えた。

「15歳くらいだったかしら。」

「俺とそう変わん無いじゃん。その頃中尉は大佐に恋をした訳だ。」

中尉はきれいな瞳を細めて苦笑した。

「…恋…って。」

「いいじゃん。昔の話なんだから。」




二人きりの時、意外と俺と中尉は気のおけない仲良しさんだ。
時々こうして大佐がいないスキを狙っては、こうして穏やかな会話を楽しだりしていた。

「俺のこともう子供子供って言えないな。」

彼女は笑う。
綺麗だな。と思う。

「あの頃、私は間違いなく子供だったわよ。」

「ちぇ。」

俺はふて腐れてそっぽを向いた。

「そうやって俺の事いつも子供扱いするんだから。」

「いいじゃない。…子供はいつか大人になるんだから。大人は子供に戻れないのよ。」

彼女はまるで弟にでも言い聞かせるようなニュアンスで言う。

「知ってるよ。そんな事。」

ムッとしたままで言った。

「でも俺は、今大人になりたいんだよ。」

真剣な顔で中尉を見ると、彼女は不思議そうに首を傾げた。

「何故?」

「中尉の事好きだから。」




中尉はキョトンとした顔をした。

「私もエドワード君の事は好きよ。」

他意は無いのだろうけど、すぐにそうと認識してもらえない事が悔しい。

「違うよ。男として、中尉の事好きなんだ。」




そう、今日はこの事を彼女に伝える為にここへ来たのだ。

副官という職業柄、勤務中は大佐が常に一緒にいるし、拘束時間が長い彼女と長時間二人きりになるためには少しばかり工夫をしなければならなかった。

彼女は目を丸くする。
でもその後に出てきた言葉は何とも酷い、

「冗談でしょう?」

…と。

「冗談でこんな事言わないよ。」

怒って言うと、中尉は珍しくうろたえたように口をつぐんだ。
頬にうっすらと赤みが注す。
やっと通じたのか。
大人と子供の間では、たとえ言葉は通じても通じにくい事がままあるのだ。

「だって…。私はあなたよりもずっと年上なのよ。」

「人を好きになるのに年齢なんて考えないよ。」

「そうよ、ね。でも私なんかのどこが…」




…俺が恋する、自称大人の女性は自分が思ってる程全然大人じゃなかった。
俺の気持ちが伝わった途端、すっかり言葉を無くして、きっと頭の中ではどう俺に言ったら良いかと一生懸命考えている。

「ごめん。迷惑だよな。」

思わず謝ると、中尉は急いで首を横に振った。

「迷惑だなんて。」

「…でも気持ちには応えられない。」

俺は先回りして言ってみた。
だってそれは予測していた事だったのだ。

本当に図星だったらしい。
中尉は痛みを堪えるような顔をしてまた黙り込んでしまった。
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