企画用
□Jack in the Box
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見るからに怪しい感じのする箱を、ロイはいかにも誇らしげに見せる。
ロイのデスクの脇の棚に置かれたその、…言うなれば、物語の中に出てきそうな宝箱のような箱を、ポンと一つ軽く叩く。
「なんなんですか?その箱は。」
不思議そうにフュリーが質問した。
ロイは待ってましたとばかりに答える。
「グラマン将軍から預かったものなんだ。古い寺院の奥から見付かった、古来の珍しい物だ。」
見た目はかなり古く、所々装飾が欠けたり、塗装が剥げたりしている。
「一週間後には中央の大総統の元へ運ばれる。それまでの間、丁重に扱わなければなるまいな。」
古いというだけでそんなに価値があるものなのだろうか?とフュリーは首を傾げる。
そんなフュリーの様子を見て、ロイはニヤリと笑う。
「その箱を開けてみたまえ。」
そうか。価値があるのは寧ろこの中身という訳か。と納得してフュリーは言われた通りにその箱の蓋に手をかける。
「………っ鍵が掛かってますよ?」
フュリーが開けようとしてもその蓋はびくともしない。
「その通り。だがこの箱の鍵は普通の鍵じゃあない。」
「鍵穴が無いですね?」
「そう。この箱は昔の錬金術師が作ったものでね。」
「一体どうやって開けるんですか?」
フュリーは眼鏡の位置を直しながらしげしげとその箱を観察する。
「この箱の中身を入れたものが、この箱を開ける為のキーワードを設定する事ができる。」
「…キーワード?」
「そう。その言葉を知るものだけが、この箱を開ける事ができるんだ。」
フュリーは感心したようにその箱を見直す。
「へぇ。そんな錬金術もあるんですか。すごいな。」
「興味深いだろう?どんなに大事な物を入れておいても安全だというわけだ。」
「そうでしょうか?開かないというだけで、この箱ごと持ち出せばいいことですよ。そんなに大きいわけでもないし、そんなに重くもないでしょう?」
ロイは待ってましたとばかりにチッチッと人差し指を立てて横に振る。
「ところがだ。この箱を動かすにもそのキーワードが必要になるんだよ。」
「成る程。」
試しにフュリーはその不思議な古い箱を動かそうとするが、ロイの言う通りびくともしない。
「本当だ。よくできていますね!どんな金庫よりも信頼できますよ!」