修業編
□7.初恋
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師匠にとって彼女はただ黙々と家事をするだけの存在、という風に見えた。
そんな親子関係を見ているとロイはやりきれないような気持ちになる。
たった二人きりの家族なのに、何故もっと大切にしないのだろう。
ロイには家族と呼べる人がいない。
だから、よけいに二人の関係が気になってしかたなかった。
「…でも、嬉しいです。」
リザは頬を染めて言う。
可愛い…。
ロイはうつむいているリザを見ながら思った。
リザが気づいていないのを良いことに、ロイはリザを見つめ続ける。
春の柔らかい日差しがリザの金色の髪をキラキラと輝かせていた。
節目がちになった瞳からは金色の長い睫が見える。
――私が君の家族になれたら…。
「少し寄り道をしていかないかい?」
「いいんですか?マスタングさん忙しいですよね?」
「いいんだよ。今日は師匠も出かけてしまっているし、たまにはね。」
ロイは目を細めて笑った。
リザもロイのその優しい目を見て安心したように笑う。
ロイは両手に持った重い荷物を無理に片手で抱えると、もう片方の手をリザの手と繋いだ。