修業編
□15.ロイの苦悩・秘伝の完成
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「さっきはくだらない話を聞かれてしまったね。」
夜いつものように、出された課題を消化するためにギランはロイの部屋に訪れていた。
「いや…。」
ロイはさっきから机に頬杖をつきながら長々と計算式を紙に書いては、納得いかずにそれを次々にゴミ箱に捨てている。
いつもの集中力はどこかに行ってしまっていた。
「立ち聞きするつもりもなかったんだが…すまない。」
「リザが落ち込んでしまいましたね。」
彼女は今自分の部屋にいるだろう。
「リザは優しいからな。」
ロイはとうとう計算式を諦めてペンを置いた。
「なぁ、ギラン。さっきの話だが…。」
ギランは顔を上げてロイを見る。
「ん?」
「軍に訴えることもできるぞ。…レンブラントと言ったか?…彼女は生きている。過去の話として軍も一蹴することはできないだろう。」
ロイは続ける。
「街中で起こった事件なら、今からでも証人が出てくるかもしれない。…もしその気があるなら私も協力するから…」
「…そんな事をしてなんになるんだ。」
ギランは顔をしかめる。
「そんなことをしても何も変わらない。」
ギランの横顔をロイは暫くじっと見つめた。
「…そうか。そうだな。」