修業編
□21.リザとギラン
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「…行ったよ。」
店員は屈んで、レジの棚の裏に隠れていた二人に声を掛けた。
ロイが店に来る少し前、うまく追っ手をかわしたギランとリザは店を出る所だった。
ロイが店に向かってくるのを見つけたのはリザだ。
「ロイさん…。」
そう呟いたリザの口を塞ぎ、ギランはとっさにレジの棚の後ろに隠れる。
あまりに急で他に隠れる所が見つからなかったのだ。
隠れた次の瞬間にロイが店の中に入ってきた。
ロイは店員と話している。
外は風が強いのだろう、ロイの黒い髪が乱れていた。
冷静な表情。
声はいつもより幾分か低く、感情を押し殺したような声だった。
リザはロイに気づいて貰おうとするが、体をギランに強く抑えつけられ、口は手で塞がれていた。
もがくと更に力は強くなり、息をすることさえ困難になる。
レジの棚の裏など、すぐ見つかってしまうような場所だったが、奥に立て掛けられた傘をロイが見つけたのが逆に幸いだった。
ロイの注意は奥へ向けられ、さっきまで隠れていた場所を調べている。
休憩室から出てきたロイは、店員と二、三言葉を交わし、裏口から出て行った。