修業編
□26.事件後
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激しく降っていた雪は、やがて雨に変わり、静かに止んでいった。
そして朝になり、太陽が昇り、空は晴れ渡る。
不思議なくらいに世界は180度変わって見えた。
冬の冷たい空気と、少し挑戦的なくらいの眩しい日差しの暖かさ。
それは凍えて固くなってしまっていた心を溶かし、澄んだせせらぎのようになって流れていく…。
…―事件から1ヶ月が経とうとしていた。
ギランの家族を奪ったアパート爆破事件の担当司令官。
ギランは彼の不正の証拠や、決して外部に知られてはならない機密情報を調べ上げていた。
その為、レンブラントの死を皮切りにギランが何らかの行動を起こすことを恐れた彼は、独断で強引にギランを始末してしまおうと考えた。
それ故の暴挙だった。
結局この件は明るみになり、上層部も黙ってはおらず、男は軍法会議に掛けられることになった。
そして、…ギラン。
不思議なことに、彼は忽然と姿を消してしまった。
あの日…
全てが終わり、ギランを助けに行った時、もう彼はその路地にはいなかった。
軍に捕まった様子もなく、自力で動く事ができたとも思えないのにも関わらず。
そこには泥と混じった血の後があるだけだった。
ロイとリザは必死でギランを捜索をしたが、依然行方は知れない。
近くの病院をあたっても、ギランの情報すら掴めなかった。
ロイはギランを置いていったことに深く悔やんだ。
「あの時…。何が何でもギランを連れて行くべきだった。」
ギラン捜索の帰り道、ロイは力無く呟いた。
リザはロイの手をギュッと握る。
「大丈夫。ギランさんは生きています。…絶対に。」
リザは何故か確信を持ってそう言った。
そう、きっと彼は生きている。
今もこの空の下で…、どこかで晴れたこの空を見ているはず。