修業編
□28.暗号の解読
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ようやく落ち着いた表情を見せたリザに、ロイも少しほっとしていた。
「ロイさんが中央へ行くのは三日後でしたよね?」
「ああ。」
「それまでに暗号が解けるといいのですが…。」
リザは呟く。
ロイはそんなリザの顔を見ながら尋ねた。
「本当にいいのか?」
リザは深く頷いた。
「私はロイさんを信じてますから。」
リザの眼差しと声には、一粒の曇りもない。
芯の通った美しさが見え隠れしていた。
「…父は私の背中に入れ墨を彫り、父の研究の全てを暗号ににして遺しました。」
「…入れ墨…?」
ロイは驚いて聞き直す。
…娘の背中に入れ墨を彫るなど…、師匠はそれほど迄に…
「…あまり、…見目良いものではないと思うので、………」
リザは少し上擦った声で言う。
背中を見せる決意は揺るがないが、やはりリザにとってロイは初恋の…、恋い焦がれる相手。
そのロイに醜い入れ墨を見せる事は、リザにとって辛い事だった。
「…無理をしなくてもいいぞ。」
リザの気持ちを感じ取ったのか、ロイは優しく声を掛ける。
だが、リザは首を横に振った。
「大丈夫です。」