詩
□声
1ページ/1ページ
心に幾重にも切り裂かれた傷口を、まだ貴方は見付けられない。
誰にも見えない。
誰にも気付かれない。
まるで世界中の黒い絵の具を身に纏ったように闇に生きる私は、誰の目にも写らない。
その闇の中に生きる私の体に息を潜ませる心は、麻痺した様に動かない。
でも、確かに言っていた。
確かに叫んでいたの。
「誰か、誰か助けて」と。
貴方には届かなかった。
誰にも届かなかった。
泣き叫ぶ声も届かない。
心は絶え間無く血を流すわけではなく、ただ、泣き疲れて涸れてしまっただけ。
一度で良かった。
抱きしめてほしかった。
頭を撫でて、「大丈夫だよ」と言ってほしかった。
もう昔の事だから、何も言わない。
そんな私も存在していた事を、届かなかった声が在ったんだということを、忘れないでほしい。
だから私は声を聞くの。
声にならない痛みを逃さず気付けたなら「大丈夫だよ」と、あの日の私に伝えれそうだから。