スターオーシャン3小説置き場。
□『ふたり一緒なら。』
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『ふたり一緒なら。』
ペターニの街の宿屋を、亜麻色の髪の少女が一人歩いていた。
コンコン…と、ある部屋の前まで辿り着いた少女が少し控めにドアをノックをする。
「……フェイト…?」
ノックに対しての返事が無いのに不安を感じ、重ねて声で呼び掛けてみるが、やはり反応は無い。
おかしいな、と思い、少し罪悪感を感じながらも、少女は部屋の扉を開けた。
ひょこ、と顔だけで部屋の中を覗くと、蒼い後ろ髪がソファの背もたれから確かにはみ出て見えた。
…が、どうも動く様子が無い。
もしやと思い、亜麻色の髪の少女…ソフィアが彼の座るソファの前に回ってみると、案の定。
「………寝ちゃってる…」
フェイトは部屋のソファにもたれ掛かって、この戦闘続きの旅の中で数少ない安らぎの一時を満喫していた。
すやすやと、昔から変わらないあどけない表情で静かに寝息を立てている。
「んもぅ、しょうがないなぁ、フェイトってば。
寝るんならちゃんとベッドで寝れば良いのに…風邪引いちゃうよ」
そう言葉を零しながらも、ソフィアは手際良くベッドの上から一枚の毛布を引っ張り出し、フェイトの身体にそっと掛けてやる。
「……本当は一緒に買い物に言って欲しかったんだけど、寝てるんじゃ無理だもんね」
少し淋しそうに、諦めた風に呟くソフィア。
しかしふっと一瞬自嘲気味に笑ったあと、ソフィアは後ろから彼に抱き付いた。 …といっても、あくまで起こしては悪いと思ったのか、フェイトの首にそっと腕を絡ませただけなのだが。
少しの間そうしてから、少女が小さく小さく呟いた。
「………フェイト…。
私、やっぱり怖いよ……」
紡がれたのは、恐れの言葉。
その対象は、もはや彼女たちの状況を知る者ならば誰でも容易に見当がつくだろう。
「私ね…?怖いの。
この世界が、凄く怖い…」
眠っているフェイトが返事を返してくれる筈が無いのを分かっていて、敢えてソフィアは話し出す。
しかし彼が起きないように気を配ってはいるのだが、次第にソフィアの腕が震えてくる。
それに気付かないフリをしながら、彼女は続ける。
「……いつもね、私ずっと不安なの。
ゲームだというこの世界がいつ壊れてしまうかも分からない…、この世界に住んでいる魔物にいつ殺されるかも分からない…。
…そして、私のこの身体に刻まれた紋章が、暴走しないとも限らない…。
……私…この世界で生きていく事が、いつもいつも不安で堪らないの…」
ぎゅっ、と。
無意識の内に、自分の腕を掴んでいる指に力が入る。
「……ねぇ、フェイト…私怖いよぉ…。
助、けて……っ」
震える声が、静かな部屋の中にそっと響く。
ソフィアは、自分の腕の上に顔を埋めた。
そのまま、フェイトの肩の上で気付かれないようにソフィアは声も出さず泣く。
……しかし。
「………ソフィア」
「…っ!!?」
今返ってくる筈の無い返事が、ソフィアの腕の中から返って来た。
次いでそっと。 彼女の腕にフェイトの手が添えられる。
驚いたソフィアは思わず彼の肩から顔を上げた。
「えっ…フェ、フェイト!?
寝てたんじゃ……っ」
「…寝てないよ。
また買い物にでも付き合わされるのかと思って、お前がここに来た時からずっと寝たふりしてただけ」