スターオーシャン3小説置き場。

□『強い涙と弱い涙。』
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『強い涙と弱い涙。』







――私は弱い。




今に始まった事じゃ無いけれど、改めて思い知らされた。




そう思った理由は、何かある毎に必ずと言って良いほど流れ出る、私のこの涙。
苦しい時も、悲しい時も、私はすぐに泣いてしまう。

そういった辛さに、耐えられないから…。



それほどに、私は“弱い”から……。
















滅多に見る事の無いフェイトの涙を見た時は、なんて“強い”涙なんだろうって思った。
いつもは耐えている感情が溢れ出した証の彼の涙は、とても強かった。
辛いと思う気持ちを抑える事の出来る彼は、なんて強いヒトなんだろうって思った。








ロキシおじさんが亡くなった時に一度だけ見たマリアさんの涙も、同様だった。
一筋の滴には、今までのマリアさんの沢山の感情が詰まっていた。



それほどに、マリアさんもフェイトもずっと耐えてきたんだなって……思った。












――それに比べて、私は何なんだろう…。
どんな些細な事でも、私は耐えられない。 どんな小さな事でも、すぐに感情を零してしまう。



……私は弱い。
なんて脆いんだろう。


どうしようも無く、自分が悲しくなった。 情けなかった。




もっと“強い”人間にならなくちゃ、いけないのに……―――





















「……………は?」


私の突然の言葉に、フェイトは眉を寄せてこちらに振り返る。
いかにも“分からない”といった表情で私の方へと近付いてきて。

「……何だって?」
「だから…、何でフェイトやマリアさんはそんなに“強い”のかって……聞いたの」

問い掛けに、フェイトは更に怪訝そうな顔で。

「…何でそんな事聞くんだよ」
「……」

返答に困って黙っていると、フェイトの方から屈んで私の視界に彼が入る。
まっすぐな瞳に、こんな事を聞いている自分ばかりが情けなく思えてきて、また泣き出しそうになってしまう。

「…ソフィア?」
「だって…私ばっかり“弱い”から……っ」
「……」

私の言葉に、フェイトが沈黙する。
それも当然……だって、『事実』だから…。


そう思っていると、フェイトの指が私の髪に触れた。
掻き分けられ、自分の髪に遮られていた部屋の光が目に入る。


「……何で、自分が弱いと思うんだ?」

顔が見えたと思ったら、逆に彼から問い掛けられる。

「っ、だって…」
「何でソフィアは弱いと思うんだよ。どうして僕やマリアが…強いだなんて言えるんだよ。
ソフィアだって、いつも頑張ってるじゃないか。僕達と何も変わらないよ」

そう言って微笑んでくれるフェイト。



……でも、分かってない。 フェイトは“弱い”って言葉を捉らえ違えてる。
違うの。 私が言ってるのは、そういう意味じゃないっ……!




「――…だって、フェイトやマリアさんはどんな時だって全然泣かないじゃない……っ!!」


勘違いされたまま慰められるのが嫌で、私は叫んだ。

……瞳は、少し潤んでる。


「私なんか…フェイトと離れてる間はずっと泣いてるしかなかった…っ。
フェイトが頑張ってる時だって、マリアさんが頑張ってる時だって…ずっと、ずっと……っ!!」

鳴咽で言葉が続かなくなりそうになっても、涙だけは必死に耐える。
こんな事でまで泣いたりしたら、本当に私は“弱い”だけの人間になってしまう。

「私なんて、今までに一体何回泣いたか分かんないよ…。
フェイトとやっと再会できた時も、エリクールであった戦争の事を聞いた時も、初めて敵を殺した時も…っ、私、怖くて…皆を困らせてばかっりだった……っ!!」

叫びながら、フェイトの腕を掴む。
何も言わない…或いは何も言えない、フェイトの顔を見上げて。


「何で皆はそんなに“強い”の…?何で泣かなくても平気なの……?
どうしたら…、私も皆みたいに“強く”なれるのっ……」



その言葉を最後に、私の瞳から大きな滴が零れ落ちる。

……やっぱりダメ、私は所詮“弱い”んだ。
結局“強く”はなれないんだ……―――












そう思った矢先、その涙は頬を伝う直前でフェイトに奪われた。





「…………それは“弱い”とは言わないよ」
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