スターオーシャン3小説置き場。

□『すれ違いの先にあるモノ。』
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『すれ違いの先にあるモノ。』




―――辛いの、ただ。
あなたがあの人と二人で話しているのを見ると、凄く胸が苦しくなるの。


でも…分かってる。

邪魔なのは私の方…。
あの人の方が、きっとあなたには似合ってる。


だから、もう、私達……



離れようよ…―――


















「なあ、ソフィア。
最近なんか元気ないけど、どうかしたのか?」

私、よっぽど浮かない顔してたのかな。
唐突にフェイトがそう話し掛けてきた。

……マリアさんとの会話を打ち切って。


「………別に、どうもしてないよ」

フェイトの顔を見ないよう、椅子から立ち上がりながらそう答える。
もし見つめ合ってしまったら、私はきっと抑えられなくなるだろうから。 自分の気持ちを優先してしまうから。

…彼の気持ちを無視して。


「大丈夫?ソフィア。
きっと今までの疲れが溜まってるのよ。今日はもう休んだ方が良いわ。」

マリアさんが私とフェイトの近くまで歩み寄って、そう言ってくれる。
彼も、それに同意して。

「ああ、それが良いな。明日も早いと思うし」
「……っ。
私、疲れてなんか…!」

『疲れてなんかない。』 そんなの嘘だけど。
本当は、もう限界に近くて。
でも、ただでさえ足手まといな私なのに、これ以上他の皆に迷惑掛けたくなんかなくて。
そしてそれ以上に、フェイトに必要以上に近づかれたくなくて―――

でも。


「―――っ!」

一瞬、視界がぐらりと揺らいで。
その先に私の体が倒れ込んだのは、フェイトの温かな腕の中だった。

「……っと。ほら見ろ、フラフラじゃないか。
変な意地なんか張らないで、休める時にはちゃんと休んでおくのが身の為だぞ」
「……」

咄嗟に私の身体を抱き留めてくれた彼が、苦笑する。
あまりにも急な事で、気が動転して一瞬何も考えられなかったけど。

でも私の心が、精一杯に叫んだ。


――…ダメ、誤解されちゃう……っ!――



「―――っ!!」


私は急いで彼の身体から離れた。
私のその行為に、フェイトがきょとんとしたけれど。 私は…。

「じゃ…じゃあ、お言葉に甘えて私もう休むねっ。マリアさん、今日のお夕飯の準備とか宜しくお願いします…。
お、お休みなさい…っ」

慌てるように、私はその部屋を後にした。
後ろに、二人を残して……。











――コン、コン。


ノックの音が耳に入って、私は目を覚ました。
どうやらあの後、自分に割り当てられた部屋に戻った私は本当にぐっすり寝てしまったようで。 窓に視線を向けると外はもう真っ暗だったけれど、おかげで身体の疲れは随分取れたようだった。

「ん……」

身じろぎをして、ベッドから身を起こす。
気のせいかなとも思ったけれど、でも本当にドアの向こうに人が居たら、そのまま待たせてても申し訳ないし。

「……どなたですか?」
「あ…ソフィア?
僕だけど……今、大丈夫かな?」



ズキ、と。
その声を聴いた瞬間、胸が痛んだ。

……どうして。



「…入って良いよ」

返事をしなければ良かった、と思ったけれど今更寝てるフリを出来るはずも無くて、私はドアの向こうの彼に対してそう返した。
かちゃりと音を立てて、フェイトが部屋に入ってくる。

「ごめん…、寝てた?」
「ううん…良いよ、大丈夫だから気にしないで。
それより、何か用?」

用件を聞いて少しでも早くフェイトと居る時間を減らしたかった私は、彼が部屋の中に入るなり問い掛けた。
けど、ドアが閉まるのと同時に、私はその答えを悟った。 鼻をくすぐる、美味しそうな匂い。


「……夕飯、持って来てくれたの?」

フェイトの手に乗せられたトレイを見て、確信する。

「あ、うん。ソフィア、何も食べないまま寝ちゃったからお腹空くかなって思ってさ…。
ネルさんに頼んで、作って貰ったんだ」
「…そっか。
わざわざありがとう、フェイト」

言葉とは裏腹に、私の中では疑問が渦巻いていた。
……どうしてなんだろう。 私の為にだなんで、マリアさんに変な誤解をされちゃうかもしれないのに…。


本当はあまりフェイトと一緒に居たくなくて、でもその反面自分の事を気遣ってくれる彼の気持ちを嬉しいと思う私も居て。
心のままに、複雑な笑顔を向ける。
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