スターオーシャン3小説置き場。
□『すれ違いの先にあるモノ。』
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『すれ違いの先にあるモノ。』(フェイトSide.)
―――最近、ずっとおかしいと思ってたんだ。
前は自分の方から僕に寄って来たくせに、今じゃそれも無くて。 僕から話し掛ける事があっても、会話はしてくれるけど、視線はやっぱりどこか違う方を向いていて。
……おかしい、なんてものじゃなかった。
本当に僕の幼馴染だった娘なんだろうかと、違和感さえ覚える程で。
またアミーナの時と同じように、瓜二つの別人なんじゃないかと、疑いもした。
でも、それはないんだ…。
だって再会した時の彼女は、まだ以前のソフィアだったのだから。
―――別人なんかじゃない。
けど、前の彼女と同じとも思えない。
……なぁ、教えてくれよ。
お前に……いったい、何があったんだ…――?
「なぁ、ソフィア。
最近なんか元気無いけど、どうかしたのか?」
ある日の夕方近く、僕は堪らず彼女に訊いた。
虚ろな視線で、もう何度目か分からない程の溜め息を吐いていて。 まるで、意識だけがどこか違う場所に飛んでいっているような…。
……いつになく、彼女のその様子が気になった。
「………別に、どうもしてないよ」
僕の声に少しだけハッとした後、ソフィアはこっちを見ないままそう答えた。
そのまま椅子から立ち上がり、どこかふらふらとした足取りでぼくの隣を擦り抜けようとするから、無意識の内に彼女の腕を掴みそうになったところで。
「大丈夫?ソフィア。
きっと今までの疲れが溜まってるのよ。今日はもう休んだ方が良いわ」
さっきまで会話していたマリアが、こちらの方に歩み寄り自身の髪を掻き上げながらそう言った。
その言葉に、僕はなるほどと納得する。 ここ最近ソフィアの顔色がずっと悪かったのも、きっと今まで溜まりに溜まっていた疲労のせいなのだろう。
「ああ、それが良いな。明日も早いと思うし」
「……っ。
私、疲れてなんか…!」
僕がマリアの意見に賛成すると、ソフィアは突然声を上げてそれを拒否した。 必死そうに、首を横に振って。
そんな顔して、疲れてない筈ないのに……。
どうして、無理をしてまでそんな嘘を吐くのだろう…?
そんな疑問がふとよぎった時、不意にソフィアに身体がふらりとよろめいた。
慌てて彼女の肩を抱き留めると、ソフィアの身体はすっぽりと僕の腕の中に収まってしまった。
……小さいな。
純粋に、そう思った。
幼い頃だって何度も抱いた筈の肩なのに、気付かない内にこんなに『小さい』と思えるくらいになってしまって。
今抱いた身体は、とても柔らかくて。
『女の子』なんだなって、今更ながらに思った…。
「…ほら見ろ、フラフラじゃないか。
変な意地張らないで、休める時には休んでおくのが身の為だぞ」
いくら身体は成長していても、危なっかしくて見ていられないところは昔のまんまだな、と思い、苦笑しながらそう声を掛ける。
けれど、それに対する彼女からの返事は無くて。 まるで止まってしまったかのように。
少し不思議に思って、やはり具合でも悪いのかと顔を覗き込もうとすると、突然彼女は僕の身体から逃れるように離れた。
何かに凄く動揺しているように、酷くうろたえた瞳をして。
――付き返した手は、僅かに震えていた。
「…ソフィア?」
「……ぁっ…。
じゃ…じゃあ、お言葉に甘えて私もう休むねっ。マリアさん、今日のお夕飯の準備とか宜しくお願いします…。
お、お休みなさい…っ」
僕が小さく名前で呼び掛けると、ソフィアはしまったという感じに小さく声を上げて、その場を取り繕うようにそう言った後、すぐの僕から離れるように部屋から出ていってしまった。