スターオーシャン3小説置き場。
□『すれ違いの先にあるモノ。2』
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『すれ違いの先にあるモノ。2』
―――あの日の夜から、フェイトは自分から私に話し掛けるという事を一切しなくなった。
クリフさんとかと話してて、もし何も知らないままにクリフさんが話題を私の方に振ってきても。
『ソフィアに訊いたって、そんな事分からないよ』
そう笑って、やんわりと私を引き離す。
自分の方から、遠ざける。
……苦しかった。
彼と会話する事が出来ないのが、こんなにも辛いだなんて思ってなかった。 バンデーンに捕らわれている時は、彼が自分の傍に居なかったから、ある部分では話せないのは仕方ないんだと諦めていた。
その分、まだ何とか堪えられた。
でも…、今は。
目の前に居るのに、それが許されない。触れる事はおろか、目を合わす事すら出来ない。
……彼が、『しない』。 捕らわれている時とは、また別の『出来ない』。
でもあの時とは、比べものにならないくらいの―――苦痛感……。
旅の途中で、私は何度も一人で泣いた。 伝える事の出来ない、この気持ちの吐きだめとして。
それでも、一生消えてくれる事は無いのかもしれないけれど…。
どんな反応でも、今はフェイトから返される全ての行為が辛かった。 それを素直に受け留めるには、私はまだ幼すぎたから。
だから、ずっと一人で泣いていた。 誰かにうまく相談できる程、私は器用なオトナじゃなかったから…。
フェイトが傷付かなければ、自分はどんなに傷付いたって良いと思ってた。 平気だと思った。
でも、やっぱりもうダメ…限界だよ……。
自分の招いたものが、どんなに私の胸を締め付ける結果になるかなんて、考えて、なかった……。
―――胸が、痛いよ……。
その日も、私はペターニの街外れで一人、ただ座って空を見つめていた。
フェイトと話す事が出来なくなった今、私は一人で居る事が多くなった。 例え二人きりじゃなくても、フェイトと同じ空間にいる事に、もう堪えられそうにはなかったから。
ついさっきの出来事が、ふと頭の中に蘇る。
フェイトと街の大通りですれ違った際に、つい零した『ごめんね』の言葉。
聞こえなかったとは思うけれど、今までの関係を壊してしまった私の、せめてもの彼への謝罪の一言。
そして自分への…。
『好きだよ』くらいは言っても良かったかな、って思う。 嫌いだなんて、言う必要はなかったかもしれない。そしたら、今より少しは気も楽だったかもしれないのに…。
でも、やっぱり彼を惑わす事はしたくはないから。
私は私に嘘を吐く。 自分の、心に…。
折角初めて生まれた、ヒトを想う感情なのに。
表に出してあげられなくてごめんね。 ずっと隠していかなきゃならないなんて、ごめんね……。
本当に、ごめんね……―――
――ぽたり。
改めて悲しい事実を実感させられて、私の瞳からは再び涙が頬を伝う。
この涙に、終わりは無いのかな。 想いが完全に消え去るその時が来るまで、ずっと流さなくちゃいけないのかな……。
「ふ……ぅ…っ。…ふぇぇ……ん…」
今まで声を出して泣く事なんて無かったのに。 今日に限ってはどうしても、零れる嗚咽を抑える事が出来なくて。
「…っ、……ふぅ…。
…ふぇいと……ふぇいとぉ………っ!!」
心のままに、まるで子供のように、私は泣きじゃくった……。
その日、私はペターニの空が茜色に染まるまで、宿には戻らなかった。 フェイトには会わない方が良いと思ってたのは勿論だけど、それ以上に何より泣き腫らした顔で人に会いたくなかったから。
「…おや、ソフィア。遅かったじゃないか、どこ行ってたんだい?」
扉を開けて宿の中に入るなり、たまたま近くに居たネルさんがそう訊いてきた。 泣いてた事には気付かれてないみたいだけど、そう訊かれると答えづらいものがある。