スターオーシャン3小説置き場。
□『すれ違いの先にあるモノ。2』
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『すれ違いの先にあるモノ。2』(フェイトSide.)
―――あの夜の出来事から、僕はソフィアと会話する事が出来なくなった。
自分の事が嫌いだと分かっていて、無理に彼女を自分に付き合わせる事など…僕にはもう出来なかったから……。
ソフィアとの会話が出来なくなった今、僕はマリアやクリフ達と話す事が多くなっていた。
……少しでも、この気持ちを紛らわせる為に。
それでも、ソフィアを失った寂しさを完全に忘れられた時なんて、一秒たりとも無かったけれど。
…あの日訊かなければ良かったと思った事は、何度もあった。 『嫌い』だと気付く事が無ければ、何も分からないまま今でもソフィアに話し掛ける事も出来ただろうに、と――。
……けれど。
やっぱり良かったんだ、これで。
彼女は僕の事が嫌いなんだと、気付く事が出来たから。 これ以上ソフィアに辛そうな微笑みをさせなくても良いという事を、知る事が出来たから。
彼女に干渉しないでやるという方法を、知る事が出来たから…。
―――唯一ソフィアと会話出来る時といえば、僕が怪我をした時に彼女がそれを回復してくれる時くらいで。
「これからは気を付けてね」って、曖昧な笑みを向けながら…。
でも、僕には分かるんだ。 その言葉の裏に隠された、本当の意味が―――。
『もう私に回復なんてさせないように、怪我なんかしないでね』
出来るなら彼女は関わりたくないんだ、僕と……。
ただ、怪我人を放っておく訳にもいかないから“仕方なく”治療してくれてるだけで。
ソフィアは、優しいから…。
でも今は……その優しさが、かえって辛い。 彼女に無理をして嫌な事をさせているという事実が、僕の胸をきつく締め付ける。
だから僕は、「ありがとう」と冷たくただ一言で彼女の傍から離れる事しか出来ない。 ソフィアの事が好きだからこそ、ソフィアに嫌な事をさせたくはないから。
例え、どんなに自分が辛くても…。
……そう。
お前を想う限り、僕は……
お前を突き放し続けるしかないんだ…―――
その日、僕は最近にしては珍しく一人でペターニの街を散策していた。 いつも話しているメンバーは、クリエイションとか買い出しとかで行方知れずだったし、それ以前に、他人と話したからって自分の心境に変化がないと気付いて余計にその行為が虚しく感じてきたから。
……きっとこの虚無感は、僕が彼女を想い続けている限り、消える事は無いだろう。
そして、彼女と一緒に居る限り、僕が彼女の事を完全にふっきることも…きっと、無い。
未練がましい……。
自分で、そう思わなくも無い。
はっきり『嫌い』なんだと彼女に頷かれたのにも関わらず、僕は彼女を避ける事で未だにソフィアを想い続けている。 彼女に、もうこれ以上嫌われたくないと、そう思っている。
そんなの、ソフィアからすれば一番迷惑な事に他ならないだろうに…。
だから、決して表には出さない。 さらけ出す事は、許されない。
…分かってる。 彼女に、これ以上近付いてはいけない事。
分かってるから…、もう容易にお前に話し掛けたりなんかしないから。
せめて一緒に居る事だけでも、許して欲しい。
これ以上はもう、お前と離れたくなんかないんだ……―――
「……………あ」
何も考えずにただ歩みを進めていた僕の目に、ふと暖かなそよ風に柔らかく流される亜麻色の綺麗な長い髪が映った。
見慣れたそれは、持ち主を象徴しているかのようで、見たその瞬間に僕は“彼女”だと確信した。 確信、できた。
「……ソフィア…」
それは、今一番逢いたくて、逢いたくなかった人。
進路も変えずにそのまま歩いていくと、相手側の方も、ようやく僕の存在に気が付いたようで。
――瞬時に、彼女の顔色が変わる。
怯えたような表情へと…。
「……………」
見たくなかった。 彼女のあんな顔を。
逢いたくなかった。 あんな顔したソフィアに。
でも、今更背中を向けて来たばかりの道を引き返す気にもなれなくて。
どんなに彼女が僕に逢いたがらなかったとしても、ソフィアの姿を少しでも見ていたいという自分の心境には、どうしても逆らえなかったから。
……自分を嫌っているソフィアの態度を見るのは、少し胸が痛むけれど。