スターオーシャン3小説置き場。
□『ずっと一緒。』
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『ずっと一緒。』
ソフィアは学校の授業が終わると、それと同時に直ぐ教室を後にした。友達の誘いすら断って、ただ一人で。
「……」
何も言わず、声も出さず、ただ憮然とした表情で一人歩く。
向かっていた先は、自宅ではなかった――。
――シュン…。
静かに音を立てて、ソフィアを受け入れる玄関のドア。
何の物音さえ耳に入ることは無い、ひっそりをほのかに薄暗い家の中。
そこはフェイトの家だった。いつもいつも、彼の夕飯を作る為、学校帰りに立ち寄っていたラインゴッド家。
けれど、ソフィアが今この家に上がったのは、夕飯を作る為なんかじゃなかった。
靴を脱いで、キッチンではなくとある部屋に一直線に向かう。
トントンと、自分の足音だけが空しく響く、彼の家の中。その音が無性に大きく聞こえ、ソフィアの胸をさらにきつく締め付けていく。
…シュッ。
センサーに手をかざすと、玄関のとほぼ同じ音を立てて部屋のドアが開く。
中に入って辺りを見渡してみても、以前と何も変わっていないと思わせる部屋の中の様子が目に入る。
ただ一つ違うのは、その部屋の主が居ないということだけ…。
ソフィアが入ったのは、フェイトの自室だった。帰って来るべき人が居なくなったその部屋は、彼が居た時と何も変わっていないはずなのに、ただひっそりをしていて、冷たい空気のみが流れていた。
温もりを無くした部屋の片隅に会った彼のベッドに、ソフィアはそっと腰を下ろした。
ふっと、天井の方を仰ぐ。
ソフィアの中に思い出されるのは、彼と別れた、あの日のこと…。
ルシファーを倒し、全てを終わらせ、そして壊れたと思った自分達の世界にも無事戻って来れて。
これでまた戻れるんだと、ソフィアは思っていた。元の、二人で幸せに過ごしていた平穏な生活に。
だけど…――。
フェイトの発した一言で、それは叶わぬものとなった。
『ごめん、ソフィア。僕はもう少しここに残るよ。
まだこの星には、やりたい事が残ってるんだ…』
突然言われて、何も考えられなくなって。
『嫌だ』と反対する時間すら無く、ソフィアはただ地球へと戻る宇宙船の窓から、フェイトの寂しそうな笑顔を見つめることしか出来なかった…。
「……今頃、どうしてるかな。
頑張って…るのかな……」
寂しさを紛らわそうと一人呟くソフィアの頬に、つうっと一筋の涙が伝った。
「あ、れ…?ど…して……?」
ぎこちなく笑いながら、ソフィアは勝手に流れてくる涙の粒を、自らの指で拭き取った。