2
□第四十三診察〜織田クリニックの悲劇
1ページ/5ページ
† † †
その日は、雨の強い日だった。
都内某所にある大病院、織田クリニックで突如サイレン音が鳴り響き、院内に慌ただしい空気が流れた。
「急げ!!」
「病室空いてますか!?」
救急外来の入り口が荒々しく開けられ、赤い光が中に差し込む。
その光を浴びて、白衣の男が颯爽と歩いてきた。
「浅井先生!!」
「容態はどうだ?」
「それが…一刻を争う状態で」
後ろの扉が開き、担架が運び出される。
会社員だろうか、横たわった男はスーツ姿だ。
車に引かれそうな子供をかばったらしい。
「後頭部を強打し、出血が酷いですね…肋骨が全て折れており、背骨も損傷しております」
「分かった…急ぐぞ!!」
白衣をバサリと翻し、院内へと戻った男――浅井長政の後を、担架と医者達が追いかける。
普通なら絶望的なその状況の中、目を輝かせながら。
天才外科医、浅井長政に治せぬ怪我など、未だかつてなかったのだから。
.