□第四十三診察〜織田クリニックの悲劇
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† † †



その日は、雨の強い日だった。

都内某所にある大病院、織田クリニックで突如サイレン音が鳴り響き、院内に慌ただしい空気が流れた。



「急げ!!」

「病室空いてますか!?」


救急外来の入り口が荒々しく開けられ、赤い光が中に差し込む。
その光を浴びて、白衣の男が颯爽と歩いてきた。


「浅井先生!!」

「容態はどうだ?」

「それが…一刻を争う状態で」


後ろの扉が開き、担架が運び出される。
会社員だろうか、横たわった男はスーツ姿だ。
車に引かれそうな子供をかばったらしい。


「後頭部を強打し、出血が酷いですね…肋骨が全て折れており、背骨も損傷しております」

「分かった…急ぐぞ!!」


白衣をバサリと翻し、院内へと戻った男――浅井長政の後を、担架と医者達が追いかける。

普通なら絶望的なその状況の中、目を輝かせながら。





天才外科医、浅井長政に治せぬ怪我など、未だかつてなかったのだから。



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