華麗なる白石家

□第2幕〜白石家の喧騒
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サアァァァ…



白石家の広い庭。そこから聞こえてくるのは、水をまく音。

色とりどりの花の中心、じょうろで水をまいているのは、白石家の長男である、精市である。

ガーデニングが趣味の彼は、決まって朝は6時に起き、水やりをしているのであった。


そして、1時間ほど経って現在は7時。全ての花に水をやり終えた精市は花壇の中心で額の汗を拭った。

「…もうこんな時間か…そろそろ戻らないと、怒られちゃうな」

そう言って精市は花に向かって優しく微笑むと、じょうろを置いて踵を返し、屋敷へと駆けていったのだった。







† † †


同じ頃、屋敷内の一室から、言い争いの声が響いてきた。


「だから、まだ眠ぃって言ってんだろ!?」
「だが、もうすぐ朝食の時間だ!!早くしないと、奥様に怒られ…」
「煩ぇ、似非メイドが!!気持ち悪ぃんだよ!!」


怒鳴り合っているのは、白石家の三男・晋助と、彼の専属メイドの桂であった。(ちなみに桂はメイド服を着ているが、立派な男である)

低血圧で朝に弱い晋助を桂が起こそうとしたところ、逆ギレされたのだ。


「とにかく起きろ!!」
「だから煩ぇって!!もう起きたよチクショー!!」


晋助はガバッと起き上がると、不機嫌さを丸出しにして部屋から出て行った。


後に残された桂は、深い深い溜め息をついたのだった。




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