捧げ物・宝物
□鈍感マイハニー
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―甲斐
ここの地を治める武田信玄は、同盟国との親睦を深めるための宴を催していた。
各地の有力な大名が集まり、宴はとても賑やかなものになっていた。
そんな中、武田が武将・真田幸村は、下座の方で杯を持ったまま硬直していた。
酒に弱いのも、その理由の一つである。だが、彼が硬まってしまったのは、それを超える出来事のためであった。
「幸ちゃ〜ん、恋してるか〜い?」
そう言って幸村の肩をバシバシと叩くのは、前田慶次。彼は既に出来上がってしまったらしい。
「けっ、慶次殿!!破廉恥なっ!!」
「破廉恥じゃないだろ?何なら…俺と、恋しないk…ごふぅっ!!」
告白も虚しく、台詞の途中で顔が地面にめり込んでしまった。
「け、慶次殿!?大丈夫で御座るか!?」
「よォ、幸村!!そんな馬鹿なんざ気にせず、俺と飲もうぜ?」
現れたのは、西海の鬼こと長曾我部元親だった。…慶次を殴り倒した張本人である。
「しかし、慶次殿は…」
「いいから」
元親は幸村の顎をそっと持ち上げ、ニヤリと笑いながら低音で囁いた。
「いい加減、俺の船に乗っちまえよ…」
「元親…殿…」
背筋がぞくりとし、幸村の顔が真っ赤に染まる。
幸村に見られない様に、ガッツポーズをした元親だったが。
ゴスッ
鈍い音と共に、元親の巨体が横にぶっ飛んだ。
「大丈夫か、真田?」
「旦那の敵はもう排除したからね〜」
顔に付いた返り血を拭いながら、あくまでもにこやかに振る舞う毛利元就、そして猿飛佐助。
「佐助!!元就殿!!」
「真田…美味い甘味を持って来たのだが、我と共に食べぬか?
…個室d」
「そうはさせないよ、毛利サン!!
旦那、俺様の作った甘味の方が好きだもんね?」
ずいっと詰め寄って問う二人にヒく事もなく、幸村は満面の笑顔でこう告げた。
「どちらも大好きで御座る!!」
「「…っぶはぁっ!!」」
大量の鼻血が宙を舞っていた。
「何だコレは!?何だこの可愛い生き物は!?お持ち帰り可なのか!?」
「うぅ、こんなに可愛く育っちゃって…俺様大感激〜!!」
ハァハァと息を荒げて近付く二人に気付いているのか、いないのか。
幸村は真ん丸な瞳で可愛らしく首を傾げるのだった。
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