短いの
□君だから妥協
1ページ/1ページ
「ふえっきし!」
「もっと女らしいくしゃみ出来ねぇのかよ。」
「私にそんなの求めないでよね…っぶぇっきしょい!」
「…更に酷くなってんじゃねぇか。」
呆れて溜息を吐く。
自分の彼女という位置に居るのにデリカシーの無い所に、任務先からずぶ濡れで帰ってきたのに体を乾かさずに寝て風邪を拗らせたこいつに。
布団を首まで深く被って息を荒く吐くこいつは見ていて痛々しいが先程の事を考えれば引っ叩いてやりたい位だ。
そこまで考えて止めた。
引っ叩いてこれ以上馬鹿になられても困るからだ。ちなみにどれ位馬鹿かと言うと、馬鹿髷を追い越して飛段とタイマン張れる位だ。
取り敢えずこんなくだらない事を考える前に目の前のこいつに薬を飲ませてしまおう。飯はさっき少しだけど腹に入れたからいいだろう。
「薬飲め。」
「嫌。」
キッパリと言い張り子供のようにプイッとそっぽを向くそいつに呆れて開いた口が塞がらない。デイダラと似たり寄ったりな歳、つまりそこそこな大人になった奴がこんなにはっきりと駄々をこねるとは。
「飲め。」
「嫌!薬苦いもん!」
「俺が作ってやったんだから大人しく飲め。」
「頼んでないよーだ。」
この小娘。そう思って深く深く溜息を吐く。
良薬口に苦しと言うように薬が苦いのは当たり前だ。
いっそこのまま放置してやろうかとも思ったが止めた。
メンバーの入れ替えで全員の任務に支障が出るし、何よりこの熱を持った真っ赤な頬をどうにかしてやりたかった。
「どうしたらいい?」
「何が?」
「どうしたら飲むかっつってんだよ。」
そう言うと待ってましたと言わんばかりに目の前の馬鹿の目と口がニヤリと弧を描いた。
言わなければ良かったと思った時にはもう後の祭り。
「口移しで飲ませて!」
「は!?」
己の素っ頓狂な声が部屋に響いた。
こいつとの関係上唇を合わせるなんて訳が無い。
だからと言ってこれは違う。そんなこっ恥ずかしい事できるか。
「ふざけんな小娘が。」
「そんな小娘に手出したオッサンがふざけんなだわよ。」
開いた口が塞がらない。あー言えばこう言う、屁理屈ばかりだが正論だ。自分がこんな姿だから釣り合ってるように見られるが実際は一回り以上離れている。
チィ…と舌打ちをし、薬を自分の咥内へと流し込み相手が反論する前に唇を塞いだ。舌で歯列を割り薬を流し込むと眉根が寄ったが喉が上下して全てを飲み込む。
それを確認してから唇を離すと追うようにまた唇が重なりついでに頬を両手で挟まれた。
舌を差し込まれ咥内を動き回る。それを諌めるように舌をジュッと音を立てて吸ってから離れた。
「このクソガキ…調子に乗んじゃねぇよ。」
「だってこの薬不味いんだもん。だから、」
サソリの味に変えてよ。
そう言って微笑む唇は先程の行為でてらてらと濡れていて艶めかしい。
赤い顔、
潤んだ瞳、
荒い息、
そして憎い程に広がるこいつに対する俺の愛情。
それだけで男の性を引き出すには十分だった。
こんな小娘に翻弄されるなんざ屈辱だ。
「……後悔すんなよ。」
悔し紛れに咥内に突っ込み、舌先で愛撫した。
〜翌日〜
「あー、治った!やっぱ運動して汗かくと治るね、サソリ!」
「旦那何したんだよ…。」
「………知らねぇよ畜生。」
********
最後までデリカシーのない子でした。
結局甘いサソリさんと誘い受けな女の子。
書いてて結構楽しかった^^
2010920