短いの

□喪失と虚無から僕は逃げ出した
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「本当に抜けるのか?」


「ああ。」


「そうか…。」



暗闇でもよく映える赤が俯いた。
瓜二つの顔を持つ、自分より数秒早く産まれた姉と呼べる人。
俺にとって唯一信頼出来る人間だ。

大人は嘘を付く。
チヨバァの嘘を見抜いてから大人を信用出来なくなった。
他人を信じない俺にとって姉の存在は『唯一無二』であり『絶対』だった。
だが俺達ももう15歳になり、大人に限りなく近付いていた。
同じだった体格は俺の方が大きくなり、奴は線が細くなった。
いつかこいつもつかなくていい嘘を付くんだろう。いつかのチヨバァのように。

そしていつか俺はこいつの嘘を見抜くんだろう。まだ幼かったあの頃のように。

だから里を抜けるんだ。こいつを『唯一無二』の『絶対』な存在として認識し続ける為に。

俺はいつか来るかもしれない不確定な未来を信じ、失う事を恐れて逃げるんだ。

離れていれば『嘘は嘘のまま』でいられるから。




「もう行く。」


「ああ。…さよなら。サソリ。」


「……さよなら。」




俺は大きな布に見を包み砂の大地を蹴り上げた。
一度だけ振り返って見たあいつの頬がキラリ光っていた。















あいつが俺を逃がした共犯者として処刑されたのを知ったのは数日後。















喪失と虚無から僕は逃げ出した

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