短いの

□朝方4時頃
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ふと目が開いた。
トイレという訳でも、怖い夢を見たという訳でもなく、ただ目が覚めた。

首を捻って窓の方向へ向けるとまだ外は薄暗かった。
今日は任務だが起きるにはまだ早過ぎる。だが寝るには少々時間が足りない。妙な時間に起きてしまったものだと小さく、ほんの小さく溜息を吐いた。
首を横に向けると金色が寝ていた。長い髪に目を縁取る長い睫毛、それに若干低い身長が女を彷彿とさせがちだがだからと言って女顔でもなく、それでも綺麗で端正な顔立ち。
鍛えられた傷だらけの腕はそれでも弱まる事は無く私の腰に回ったまま。
暖かくて愛おしい、彼。
その温もりに縋りたくなって胸元に顔を寄せると腰に回った腕が更に私を引き寄せた。視線を上げると透き通るような大空色がゆっくりと開かれた。


「起こしちゃった?」

「ん…まだ起きる時間じゃねぇだろ…?」

「うん。」

「じゃあ寝ようぜ…。」

「うん。」



頷くのを確認すると腰に回っていた腕が今度は背中に回され、もう片方の腕は頭の下に置かれ、そのまま髪をゆっくりと梳かれる。
優しくて暖かくて心地良い。彼の大きな手の平がくれる安らぎが犯罪者である私をただの女に戻してくれる唯一の手段。
自然と瞼が降りてきて、でも寝る前にもう一度彼を見たくなって視線を上げると優しく細められた青色が見えた。
きゅっと胸が締め付けられた。
それから柔らかそうな、少しかさついた唇に唇を寄せた。



「おやすみ、デイダラ。」

「おやすみ。」



私はデイダラの胸に潜り込んで今度こそ目を閉じた。







微睡みの幸せ









2010719

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