短いの

□声
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その日の夜サソリの部屋に呼び出された。昼間の事をまだ怒っているのだろうか。好きな人の部屋に行けるのは嬉しいが若干憂鬱だ。

コンコン、とノックをして律儀に返事を待つ。ノックしたのとあまり大差ない時間で、入れ。と返事が返ってきた。


「サソリさん何かご用ですか?」


平然を装っているが内心ビクビクだ。この人に嫌われたら私は生きていけないだろう。その位好きだ。


「もう少しでメンテナンスが終わる。そこで待ってろ。」


指示に従いベットの縁に腰掛ける。
喉は既に直したらしく約半日ぶりに聞いた彼の甘い声にどきりとした。先程ノックした時にも聞いたがドア越しと直接では意味合いが全然違う。身近で聞く方が断然良い。


本当にあと少しだったらしく、直ぐにメンテナンスを終えたサソリは懐から一つの箱を出し投げて寄越した。見事にキャッチした私は首を傾げる。


「何ですかこれ?」

「今日の買い物の礼だ。」


いつもは何もくれないのに珍しい事もあるものだ。だが彼に物をもらえるのは非常に嬉しい。兎に角、私は直ぐさま開けてみた。
開けた先にあったのは昼間に見た銀の髪飾り。


「っ…サソリさん、これ!」

「欲しかったんだろ?それ。買い物の礼だ。」


そう言ったきりまた傀儡のメンテナンスを始めたサソリさん。
女の子の多い店で、しかも声の出ない状態で買うのはさぞかし苦労しただろう。


「っサソリさん!!」

「…っ!?、んだよ!?」


感激のあまり髪飾りを握り締めたまま後ろからがばりと抱き着く。抱き着かれたサソリさんはメンテナンス道具を落とし珍しく慌てていた。
嗚呼、感激すぎて涙まで出て来た。


「サソリさん、サソリさんっ」


「……何だよ。」


「サソリさん…好きです…。」


「…。」



気持ちが溢れ過ぎて言うつもりのなかった想いがつい口から零れてしまった。サソリさんから返事は無く、気まずくて顔をサソリさんの肩に埋めてもう一度ど、今度は小さく好きと呟く。もう言ってしまったら後はやけくそだった。声は思ったよりも醜くひしゃがれていて泣いているのがバレバレだった。
やはりサソリさんから返事は無かったが宥めるように頭をぽんぽんと叩かれた。拒否されなかっただけマシだな。
落ち着こうと大きく息を吸うとズビッと鼻が鳴った。やばい、汚い。


「…今度出掛ける時はそれ付けろよ。」


「ぶぇ?」


「分かったか!?」


「あ゙、ばいっ!」


慌てて言ったせいか舌を噛んでしまった。ひそかに痛みに堪えるがそれ以上にまたサソリさんと出掛けられるのが嬉しくて、抱き着く腕に力を込めた。









*****あとがき*****
ヒロイン→サソリのようなサソリ⇔ヒロイン。
後日お出かけした時にサソリさんから告白されます。ヒロインから言われた時に返事を言わなかったのは男から言いたいっていうちょっとした意地からです。

読んで下さってありがとうございました!
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