短いの

□声
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ある日突然サソリさんの声が出なくなりました。
喉の部品が壊れたらしく、今その部品が切れてる上に替わりの傀儡も調整中。
喉の部品を買うついでに他の部品も買う事になり、かと言って声の出ないサソリさんを一人で買いに行かせられないので何故か意思疎通できる私が付き添いで居る次第であります。



(サソリさん、意思が店員に伝わらなくてキレそうだもんなぁ…短気だし。店半壊させそう。)


「……。」

「…な、何よ…何も変な事考えてないわよ?」



町へと続く道をぼけっと歩きながらそんな事を考えていると横からサソリさんの鋭い視線が。
慌てて返せば今度は胡散臭そうな視線が。サソリさんの視線は大きくつぶらな瞳なのに酷く痛い。
あああ、そんな目をしないで下さい!私はあんたが好きなんだから傷付くんですけど!
なんて言えるわけもなく苦笑いで返す。

サソリさんは私への興味が無くなったか(はたまた呆れたか。できる事なら後者のがマシだ。)
キョロキョロと視線と僅かに顔を動かしながら目当ての店を探す。
サソリさんの視線が外れた事を少し残念に思いながら暇潰しにサソリさんとは全く違う店を探す。だって傀儡に興味ないんだもん。

サソリさんと同じようにキョロキョロと見回していたら唐突に服に引っ張られるような違和感を感じた。
引っ張った手を視線で辿ると辿り着いた先にはサソリさん。
声を掛ける以外に引き止める術が思い付かなかったのか。サソリさんなら肩を掴むかチャクラ糸で引っ張りそうなのだが。
服を引っ張る仕種が存外に幼く、惚れたからうんぬんを抜かしても愛らしい。

悶えそうになる心を抑え(行動に表すと後が酷いから。)、抑えきれなかった笑みを僅かに浮かべ、どうしたんですか?と尋ねる。
サソリさんは何を言うでもなくじーっとこちらを見てくる。何事かと周りを見て状況を確認する。いくら意思疎通できると言ってもツーカーみたいになんでも分かるわけではないのだ。

後方少し斜めを見ればサソリさんお目当ての部品屋。


「ああ、着いたんですか?」

「……。」

「そうですか。では行きましょうか。」


質問に視線で答えるサソリさん。珍しく見る本体は無機質ながらも永久の美の名に恥じない造形をしている。女である私より綺麗だ。女形無しである。

普段ヒルコの時ですらあまりないサソリさんの視線を何度も感じれて嬉しいのだが心臓が持たない。
わざと視線を外してサソリの腕をなるべく自然に見えるように振りほどき先を歩いて店に入る。


サソリは店に消えていく華楠の背中を暫く見つめた後常人には分からない程の僅かな苛立ちをその無機質な顔に織り交ぜ後を追うように店の中に消えていった。



無事に部品を買い終え町を出ようと歩いているとふと見えた小物屋に釘付けになった。


「か…可愛い…!!」


ショーウインドーに飾られていたのは軽く飾りのちりばめられた花の銀細工の髪飾り。色とりどりの硝子があしらわれたそれはなんとも気品漂う出来だ。


「でも高いなぁ…。」


値段を見ると自分の買える値段より若干高い。アジトに戻れば無い事は無いが犯罪者故にそう何度も街には出られない。次来る迄には売れてしまっているだろう。諦めるしかなさそうだ。
肩を落として振り返るとサソリさんがじっとショーウインドーを見ていた。髪飾りとサソリさんを交互に見る。…悔しいが私よりサソリさんのが似合うかもしれない。
複雑に思っているとサソリさんがいつもの無表情より若干顔を歪めてこちらを睨んできた。ああ、考えがバレてる。


「あ、あーっ!私そう言えば鬼鮫さんに買い物頼まれてたんだった!急いで行ってくるのでサソリさんここで待ってて下さい!!」


冷や汗をかきながら思い付いたように行って進行方向とは逆方向へ走り出す。実際におつかいの事は忘れていたのだが。
このあと買い物中にサソリは待たされるのが嫌いだと言っていたのを思い出し急いで戻る事になる。案の定サソリの機嫌は悪く(無表情であまり分からないが雰囲気で、)気まずい気持ちでアジトまで帰る事になった。
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