短いの
□堕ちた!
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「ねぇ、サソリ。何でこうなっちゃったんだろうね。」
「さぁな。」
「私達恋人だった筈だよね?」
「まぁな。」
木の上と下で暢気に交わされる会話。今日は月が綺麗だなー何て見上げる。私達の下や周りには沢山の同じ里の者の死体。立っているのはもう私とサソリしか居ない訳で、その私もサソリの毒でもうあんまり長くはないんだけど。
「ってかさぁ、あんた五年も経つのにちっさいまんまだね。ちゃんと食ってる?」
「うるせぇ。俺の体はもう老ける事はねぇんだゆ。」
「…え、何、20歳にもなって妖精宣言?サソリちゃん痛ぁーい。」
「違ぇよ!」
ケタケタと笑いながら話しているが実は物凄く辛かったりする。体中が痺れて動かない。サソリの怒声も遠く聞こえる。
太い木の枝に跨がっているから落ちる事はないと思うが…
「おろ?」
と思ったらぐらり、と体が傾いて落ちた。
あーあ、頭からいくんだろうなー。地面にぐしゃりだなんて、短い人生だったなぁ。
何て思ってたら、どさりと何かの上に落ちた。と言うより抱き留められた。
ぼやける視界で上を向くと至近距離に綺麗な赤髪。彼が里を抜ける迄は恋人だったとは言え流石にちょっと恥ずかしい。
「間抜け。」
「誰のせいよ。」
さぁ、知らねぇな。とククッと喉で笑う彼は昔と本当に変わらない。口調も仕種も、何もかもが昔のまま。
「夢…叶えたんだね…。」
震える手でそっと頬に触れる。抱き留められた時に感じた違和感を疑問じゃなく核心に変えて。
掌に伝わるのは人間の柔らかさも体温も無く、あるのは無機物の冷たさ。
昔言っていた、最強の傀儡を作りたい。まさかそれが自分を改造する事に繋がるとは思ってもみなかったが。
あぁ、と一つ呟いて僅かに目を伏せる。
長い睫毛が目元に影を作って綺麗だ。元々綺麗な顔はしていたが傀儡になって更に増した気がする。さながら西洋のアンティークのような。
「俺と一緒に来ないか?」
伏せていた瞼を開け真っ直ぐにこちらを見つめる。
唐突に出た問いに返すのは勿論否定だ。