OG C RouteB
□第18話 漆黒の翼
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「オラーイ、オラーイ!」
「第八コンテナ退かせ!これじゃ入らない!」
「誰かジャッキアップ手伝ってくれ!」
夜中だと言うのに、クロガネのある一角は忙しく稼働していた。
そこは機体を整備する格納庫だ。
「ロイ班長、OSの調整終わりそうですか?」
「明け方には終わるさ。そうだ、夜食切らしてるから補充しておいてくれ」
「はい」
モスクワで積んだコンテナの中には、連邦軍からの土産が入っていた。
と言っても、用意させたのはマリオン博士だ。
「ふぅ………。いよいよspeck-Sのお出ましだ。ちゃんと目覚めてくれよ、ヒンメル?」
喋りながらも手を休めないロイ。
エディとルーゼを乗せ、モスクワを経ってから二日間、ひたすら新型OSとヒンメルLCの調整作業に没頭していた。
クロガネは既に宇宙に上がっており、誰にも気付かれる事なくコルムナを目指す。
「休まなくても良いのか?」
様子を見にゼンガーが覗きに来た。
「二、三時間眠れば、一週間は徹夜出来る僕ですよ?まだまだ余裕です」
「ふむ………」
目の前の黒い機体を見上げる。
「キョウスケ・ナンブのリーゼとどっちが強いと思います?」
作業を続けながら、ロイは唐突に尋ねた。
それにゼンガーは直ぐに口を開いた。
「機体性能では、奴のリーゼと良い勝負になるだろう。だが、乗り手で大きな差になる」
相変わらず視線は上だ。
「キョウスケよりもエディは劣ると?まあ、僕もそう思います」
ここでロイは作業を中断した。
「例えばあいつが暴走状態になったとしても、キョウスケとリーゼには敵わないでしょう?」
「……………。」
少しの沈黙を挟んだ。
「なら、何故奴をこの機体に乗せる?」
先に口を開いたのはゼンガーだった。
「………個人的な興味です」
再度、作業を再開するロイ。
「ふっ………。俺も少なからず、あのキョウスケとエドワードがやり合うのを見てみたいと思っているさ」
ゼンガーは踵を返し、歩き出す。
「奴らはまた進化していた。俺の知らない内にな………」
静かにそう呟き、何処かに消えた。
「………進化」
何となくロイもヒンメルを見上げる。
「そう、特に奴は急激に進化していた………」
その顔は凛々しかった。
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