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□闇夜の月
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昔々のお噺です。
ある日、月も昇らぬ夜がありました。
道は暗く、道を行く人も怯えながら歩いていました。
そして不意に飛び出した白刃。
あっという間にそこにいた人の体は二つに裂け、声も立てずに死んでしまったのです。
その時、高い塔の上に一人の少年が座っていた。
その表情は仮面のような笑みだった。
それからも闇夜は繰り返され、人々は次第に家の外にでないようになってしまいました。
でも本当は闇夜ではなかったのです。
きちんと月は昇っていた。
見えなかったのは見た人の心が黒かったから。
人々は協力し、闇夜を凌いだ。
すると、いつの日にか気がつけば月が昇っていたのだ。
そして、毎日塔の上にいた少年の姿はなくなった。
今では、月は毎日姿を変えて昇っている。
今日も綺麗な月を見て人々は微笑む。
あの少年もまだ笑っているのだろうか。
これは昔々のお噺。
人々と協力することを覚えた人間は成長した。
しかし、その裏には犠牲になったものもある。
次の月はどんな姿を見せるのか・・・
→あとがき