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□紅い月
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 昔々のお噺です。





 ある日、誰かが空を見ました。


 その日の月は恐ろしいほど紅いのです。





 そして、月を見た人の目は紅くなり、気がつくと返り血を浴びていました。


 それが、どうしてなのか誰にも分かりません。





 ある時、紅い髪の少女が云いました。


 「紅い月は人の心を惑わす。」と。





 でも、その噺を聞いていた人は気づいたのです。


 彼女があの「紅い月」だと。





 それからも紅い月は昇り、人々を惑わせた。


 人は紅い月を消そうと思った。


 でも、それは赦されないことで・・・





 怒り狂った紅い月は人間を消滅させた。


 「これで人間達も大人しくなるだろう。」


 でも、それは違った。





 人間がいなくなると同時に紅い月も消滅した。





 今でも紅い月は消滅したまま。


 人間達は生まれ変わり、学習したのだ。


 『争いをなくせばいい』と。


 『争いは二度としない』と。





 そのことを見ていた少女は嬉しそうに微笑み、闇の中に姿を消した。





 これは犠牲となった者達のお噺。


 多くの犠牲の上に今の私たちが成り立っている。


 それはこれからも変わりはしないだろう。





→あとがき
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