長編集

□you are my …
1ページ/1ページ




「銀ちゃん!銀ちゃん!明日は何の日でしょーか!」

目をキラキラさせて唐突に質問してくる神楽に、銀時は訝しげな表情でジャンプから視線を上げる。

「…は?」
「だーかーらー!明日は何の」
「じゃなくて!…突然なんだよ」
「5月9日!明日は何の日でしょう」
「話し聞いてねーなコイツ…5月9日?…あ?」
「はぁ、これだから銀ちゃんはいつまで経ってもまるで駄目な夫、略してマダオアル」
「なんなんだよお前!ってーか夫ってなんだよ!銀さんまだ独身だからね!」
「マダオのままだといつかマミーも呆れて出て行ってしまうヨ!」

わざとらしくため息を吐いて、神楽が視線を移した先には、せかせかと掃除をしている新八の姿。その後ろ姿を見て(確かに、新八は母ちゃんだよな)と頬を緩ませる。

もう誰がどう見ても万事屋は父母娘の3人家族なのだが、その事実に気づいていないのは新八だけ。銀時や神楽は周りからそう思われているのに気付きながら、否定する事なくむしろ喜んで受け入れている。
事実、銀時が新八を想う気持ちは「仲間」や「上司と部下」を越えたものになっていた。いつから?そう問われても、明確な日付を答える事は出来ない。いつの間にか、ゆっくりと心に入り込んでいて、もう無くてはならない存在になっていた。最初こそこの気持ちを否定したものの、ある事をきっかけにはっきり自覚した。
それは新八の姉である妙を奪還すべく、柳生家に乗り込んだ時、九兵衛が新八を責め立てた時だった。まるで自身が侮辱されたように頭に血が昇って、気づけば口を開いていた。(何も知らないお前が新八を語るな)
この事があってから、新八を大事に思う気持ちは一層増していた。しかしまだ伝える気はなかった。もし、拒絶されたら?そう考えると柄にもなく足がすくむ。あの笑顔が向けられなくなる、想像しただけでもゾッとした。

「仕方ないからマダオな銀ちゃんに教えてやるネ!明日、5月9日は母の日アル」
「ははのひ?」
「そうネ!女は記念日を大事にする生き物アル!新八もそうに決まってるネ!」

(記念日じゃねーし、大体新八女じゃねーし)とか色々ツッコミたい所はあったが、銀時はちらりと新八を見て、ただ「あぁ、そーだな」とだけ呟いた。普段なら面倒くさがってそんな事はしない。つーか恥ずかしい。

しかし、今は少し普段とは状況が違うのだった。



_

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ