長編集

□you are my …
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それは今から1ヶ月ほど前のこと

その日銀時はいつものごとくソファーに寝そべりジャンプを読んでいた。テレビでは結野アナが今週の天気予報を伝えている。

(雨続き、ねぇ…確かに最近の湿気は半端ないな、俺の髪も暴れ放題…いやいやいや、違うよ?決して天パとかじゃねーよ?ちょっと人より自己主張が強いだけで)

そんな事を悶々と考えていると、ふと後ろから神楽の声がかかる。

「銀ちゃん、新八は?」
「…」

そう言えば帰りが遅い、夕飯の買い出しに行くと万事屋を出ていったのが今から3時間前、見上げた時計はあと少しで9時だ。

「雨…強くなってきたアル」

声に滲む不安に振り向けば、迷子の子供みたいな顔をした神楽が立っている。それを見て思わず笑えば、腹に鉄拳が飛んで来て、必死でそりゃもう必死でよける。

「…っぶねぇ!おま、手加減を知れ!」
「うっさいネ!早く探しに行けヨ!」
「そんなに心配しなくても帰ってくんだろ」
「…」
「分かったよ!しょうがねーなぁ」
「…」

がしがしと頭を掻きながら気だるそうに玄関へ向かう銀時を見つめる神楽(本当に正直じゃないアル)神楽が鉄拳を飛ばして立ち上がった銀時は神楽が何も言わないうちから、原チャの鍵とヘルメットをしっかり手に持っていた。

(マジで雨強くなってきたな)

屋根に打ち付ける雨音はまるで鉛玉でも降っているかのようで、屋根を突き抜けるのではないかと心配になる。

「ちょっと、出てくるからな…」
ピシャーン!ガラガラガラ

おいおいマジですか、真っ暗になった視界に唖然としていると、奥の部屋でガタガタと音がする。

「銀ちゃーん!真っ暗で何も見えないヨ!」
「停電だよ、ったく、近くに雷落ちたんだろ」
「銀ちゃーん」

神楽の声のする方からグシャ、ドカ、バキと言った効果音が響いている。恐らく真っ暗闇の中、がむしゃらに動きまくっているのだろう。

「おい、神楽動くな!家が壊れる!壁辿ってこっち来い!」

だんだん暗闇にも目が慣れて家具などの配置が見えてくる、壁に張り付くようにして近づいてくる神楽に声をかける。

「おい、風呂場行ってブレーカー上げてこい!俺ぁ、ちょっと外見てくる」

そう言って玄関に手を掛けようとした瞬間、突然扉が開いた。

「うおぁ!」

誰か立っているのだが月明かりの逆光で分からない。驚いて玄関にしりもちを着いたまま、そいつを見上げていると、パッと明かりがついた。

「銀ちゃん!明かりついたアル!……って、新八!!」

風呂場から顔を覗かせた神楽が俺の前に立っている人物、つまり新八に走り寄る。俺はと言えば思考回路の止まった頭で新八を見上げていた。

そこに立っていたのはずぶ濡れで、腹を押さえて苦しそうに息をする新八だった。体には無数の切り傷と押さえた腹からは血が流れている。

「ぎ…さん」

呟かれた言葉にハッとして、崩れ落ちた新八を抱き止めると、その余りに冷えきった体に驚く。顔面蒼白で立ち尽くしている神楽に布団を用意させて新八を寝かせる。

「おい、新八!大丈夫か!?」
「…っ、う…」

額には大粒の汗が浮かび、きつく結ばれた口からは、時折堪えきれないらしいうめき声が漏れる。
幸い腹の傷口は出血の割には浅く、止血をして薬を塗り包帯を巻いて痛み止めを飲ませると荒かった呼吸も大分落ち着いた。



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