長編集

□you are my …
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その夜、銀時は一睡もせずに看病をしていた。神楽も寝ずに見守っていたのだが、新八が静かに寝息をたてるのを聞いて、安心したのか眠ってしまったので押し入れまで運んでおいた。

外がぼんやりと明るくなり始めたころ、握っていた手に力を感じて顔を挙げれば、うっすらと瞼を開けた新八と目が合う。

「新八っ、起きたか」
「銀さ…っう…」
「まだ、無理すんな、浅いけど腹切れてんだ、寝とけ」
「は…い、すいませ、ん」

頭をポンポンと撫でてやると、微かに微笑んでゆっくり瞼を閉じるとまた寝息をたて始めた。その姿にやっと銀時も少し安堵した。と同時に、新八の身に何が起きたのか、誰がこんな事をしたのか、ふつふつと怒りが沸き上がってギリッと音がするほどに歯を食い縛った。

新八が起き上がれるまでに回復したのは1週間後の事だった。傷口から化膿して、熱を出し寝込んでしまっていたのだ。動けるようになった新八に銀時は何があったのか問い詰めた。しかし新八は「ちょっと喧嘩に巻き込まれて」と困ったように笑うばかりで、詳しくは話さないのだった。
あの傷は喧嘩なんかでつくものじゃなく何かを隠しているのは明らかで、それでも銀時がその話題を出そうとすると「銀さん、大丈夫ですから」と笑うばかり。その笑顔にはどこか有無を言わせない所があって、それ以上の事は聞けないままだった。

そしてそのまま時は過ぎ、今に至っている。
あの日から新八はずっと元気がない。いや、他人から見ればいつもと変わらないように振る舞ってはいるが、銀時や神楽、そして姉である妙にはそれが空元気であることが一目瞭然だった。

(本当に、何があったんだよ)

先日、新八と向かい合うようにソファに腰かけてテレビを見ていた時、なんとなく上げた視線に映った新八の姿が脳裏に浮かぶ。
銀時がほとんど聞き流していたテレビは、最近続いている爆破テロについての報道をしていた。新八はその画面を睨み付けるように見ていた。きつく握りしめた拳には血管が浮かんでいる。
「新八?」声をかけると、ハッとしたように振り返り、ひきつった笑顔のまま「あ、せ、洗濯物…」とか言いながら居間から出て行ってしまった。

(連続テロがなんか関係してんのか?)

考えても答えは出なかった。正直、なにかあったときに新八が一番に頼るのは自分だと思っていた。だから何も話さない新八に、自分は頼りない存在だったんだろうか?とそんな気持ちばかりが募っていた。

(んでだよ、何で俺は新八の事になるとこんなにヘタレなんだよ)



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