長編集

□you are my …
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翌日いつものように出勤してきた新八に、いつものように叩き起こされた。神楽は母の日と言う事で朝食を作ると張り切って台所に入って行った。新八は心配そうに台所の方を見つめながらソワソワしていたが、案の定モクモクと上がった黒い煙に慌てて駆けて行く。暫くして真っ黒になった神楽が出てきたが、珍しくシュンとしている。結局朝食は卵かけご飯とゆう至ってシンプルなメニューに落ち着いた。「いただきます」をしても神楽は落ち込んだままで、見かねた新八が声をかける。

「夕飯は一緒に作ろうね」
「…!」
「とびきり豪華にしよっか」
「うん!肉!肉が良いネ!」

すっかり元気を取り戻した神楽と笑い合う新八を眺める。こうゆう事はしばしばあるが、母ちゃんである新八に任せるのが一番だと分かっているので、銀時は無言で見守っているのが常だった。

「銀さん、食事終わったら原チャ出してもらえますか?今日は隣町のスーパーがセールなんですよ」
「お前、本当母ちゃんな…おい神楽!お前らも今日は一緒に行くぞ」
「もちろんアル!」
「わんっ」

外は晴天で陽射しが少し暑いくらいだった。俺の後ろに新八、定春の上に神楽、各々が定位置につくとエンジンをかけた。巨大な犬が公道を走るのが交通ルールに違反するのかは知らないが、深く考えない事にする。途中で信号で止まっていた間にすれ違ったニコマヨ野郎も「今日は勢揃いだな」と言っただけだったので、まぁ気にする事はないだろう。それより普段は視線だけで人殺しをしそうなクセに、にこやか(とまでは行かないが幾分人当たり良く)新八に話し掛ける態度の方が気になった。

「おい新八、もう行くから掴まっとけ、そんな奴と話してるとマヨネーズが移るぞ」
「何言ってんすか、うわっ!急に出さないで…って、土方さーん!すいませーん!」

後ろから怒声が聞こえるが気にしない。新八は自分のせいでもないのに律儀にも謝っている、まぁそこが新八の良いところだ。

スーパーに着くと、そこは戦場と化していた。凄い形相でキュウリを積めている主婦達をガラス越しに見ていると、隣から「よしっ」と気合いの入った声がした。

「じゃあ行ってきますね、銀さんは待ってて下さい」
「おーよ」

腕を捲ってズンズン歩いていく新八を見守る。多分俺はあの戦場では足手まといだ。ふと荒い息を感じて振り向くと、乱雑に木に紐を結ばれハッハッと息をする定春と目があった。

「…あ?神楽は?」
「くぅん」

定春の視線を追って、スーパーの自動ドアを見ると、神楽が全力で走り込む所だった。(…死人が出るかもな)嫌な汗が背中を伝う。
暫くして2人が出てきた。有り得ない大きさに膨れ上がった袋を抱えて、嬉しげに笑顔を浮かべる新八と、その隣には酢昆布つめ放題の袋を誇らしげに掲げる神楽。半場呆れながら2人を迎えた。

再びバイクを走らせると、後ろから新八の声がかかった。

「銀さん、ちょっと川原に寄って下さい」
「あぁ、いーけど何で?」
「着くまで秘密です」

何だか楽しそうに笑う新八がギュッと抱きつく力を強くしたのを感じて、バイクの速度を上げる。

「おい神楽ぁ!ちょっと川原寄るぞ」
「アイアイサー!」



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