長編集

□you are my …
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通されたのは近藤の自室だった。土方は止めたが、銀時の様子から何かただならぬ空気を感じ取ったらしい近藤は、自室に招き入れ人払いをした。今この部屋には土方も交えて3人しか居ない。

「で、何があったんだ?」
「…最近のテロ事件の事について教えてくんねぇか」
「悪いが、それを知りたい理由を聞かんと駄目だ、こちらも仕事柄べらべらと喋るわけにはいかんからな」
「……」

新八が居なくなった事を余り広めたくはなかった。無闇に話が広がれば新八の身に危険が及ぶかもしれない。しかし目の前でジッと見つめてくるゴリラは嫌に真剣な目をしていて、その意思は固そうだ。(こいつらなら大丈夫、か)いつもは会えばいがみ合う仲だが、いざというときは何だかんだで信用出来る。
こうやって人を信用出来るようになったのも、アイツの、新八のお陰だと思う。いつでも真っ直ぐで素直ですぐ騙されて、それでもめげずに疑う事を知らない新八を側で見ていたからこそ、自分の頑なな心もいつの間にか溶かされていた。人を信頼する強さを知った。

「実は…」

最近の新八の様子と今朝の事件の事について話すと、2人は難しい顔をして黙った。重い空気に包まれた部屋をタバコの煙がゆるゆると充満していく。そして、しばらくの沈黙を破ったのは近藤だった。

「そうか、そんな事が…分かった、話そう。テロ事件の事だが、恐らく高杉の一派が関わっている。真撰組としても全力で捜査をしているんだが、中々手がかりが掴めなくてな…本拠地も分かっとらんのだ、ただ爆弾については、新型でな特殊な薬品を使っているらしいぞ」
「高杉…っ、アイツ…」
「すまんな、新八君がそんな時に、あまり役にも立てんで」
「いや、充分だ、ありがとよ」
「てめぇが礼を言うなんざ、今日は槍が降るぜ」
「うるせぇよ、マヨラーは大人しくマヨネーズでも吸ってろ」
「ぁあ?マヨネーズなめんなよ!?天パァァ!!」
「ぁあ?天パなめんなよ!?マヨ…じゃねぇ、こんな奴に構ってる暇ねぇんだよ俺は、じゃあな」
「ってめぇ!待て!これじゃあ俺が残念な奴みたいじゃねぇか!!」

後ろから聞こえる怒声を無視(あれ、デジャビュ?)して屯所を後にすると、再び原チャを走らせる。
向かうのは旧友の所。裏社会のことは裏社会のやつに聞くに限る。蛇の道は蛇というやつだ。

その頃残された近藤は同じく残された土方をなだめると、すっくと立ち上がった。

「?どこ行くんだよ」
「お妙さんの所に決まってるじゃないか!大事な弟君が居なくなって心細い思いをしているに違いないからな!」
「あぁ、本当アンタもめげねぇなぁ」
「愛は無償で与えるものだからな!たとえ見返りが無くても…アレ?おかしいな、目から鼻水が…」

自分で言っていて悲しくなったらしい近藤にティッシュを投げつけると、鼻をかむ可哀想な上司を見て苦笑う。(まぁ、あの女も本当はまんざらじゃないだろうよ)

そうして志村家へと向かう近藤を見送ると、先ほどの銀時の様子を思い出す。あの男はあまり人に執着しないタイプかと思っていたが、どうやら眼鏡は例外らしい。
屯所来た時のあの目、もし新八に何かあったとしたら、奴は何をしでかすか分からない。

(高杉が関わってるとしたら、やべぇな、無事で済むとは思えねぇ)

鋭い目付きで空を見上げ、ふーっと煙を吐き出す。空はどんよりと雲で覆われていたが、ポツリポツリと雫が落ち、次第にその雨脚は強くなっていった。




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