REST

□Love(less)
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こうのとりに運ばれた赤子なんて、いない。
そうかな?
なら、コインロッカーに押し入れられた命は?
見ず知らずの他人の門扉に置き去りのあの子は?
あるときは、真夏の熱が生んだ熱帯夜に。
またあるときは、寒い外界から逃れるように身を寄せ合う、イヴの晩に。
夏の子はきっと蝉の季節には間に合わないだろう。
冬の子は枯れ木のように朽ちるのだ。


どうして?どうして作っちゃったのさ?
僕を授かった訳でもなければ、望んだ訳でもないのに。
やっと僕はこの世界に誕生できたのに。
あんたたちが生きてきた数十年が、僕にはとてつもなく遠く、眩しい。太陽みたいだ。僕の「太陽」となるべき人だって信じていたんだけど。
そうじゃないと知ってしまった今、やっぱり生まれたくなかったよ。
僕の命は間もなく尽きる。
「生まれてすぐ死ぬ」、そんな定め。
笑えるくらいに単純な生死。
命は儚いなんていうけど、これじゃあまるで大量生産された缶詰みたいだ。
ヒトの細胞と血と骨と、涙とが詰まった非常食。

こうして僕は死ぬ。
今もまだ見つけられないまま。
駅の公衆トイレの底に。
非常階段の裏側、3ヶ月前の新聞に包まれて。
空地の隅に生ゴミとして。


そんなに楽しかった?
そんなに直に触れ合っていたかった?
そんなに寂しかったの?

だったら―――――………

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